ものづくりの町である三条の良さを知り、ふるさとに愛着と誇りをもってもらおうと三条市は毎年、市内9中学校すべてで中学生から包丁研ぎを体験してもらう「包丁研ぎ学習」を行っており、9日には大崎中学校(菊池良秀校長・生徒389人)で1年生全員が学習した。
三条市教育委員会が行う「刃物・ものづくり教育」の一環の事業。市内の小学校は、和釘づくりと小刀学習、中学校では刃物教室として包丁研ぎと大工道具などの使い方を学習する木工用工具学習を行っており、いずれも児童生徒は、卒業までにいずれかの学年で体験する仕組みだ。
大崎中では、包丁研ぎ学習を1年生の技術の時間に行っている。講師は、かつての刃物職人も含む三条市シルバー人材センターの刃物研ぎグループの会員6人で、1年生の4クラスが順番に1時限ずつ受講した。
生徒31人が体験したクラスでは、包丁や砥石の種類の説明を聞いてから、家庭から持参した包丁を研いだ。包丁の刃を砥石の面に当て、そこから約15度おこして刃先を前後に滑らせる。片方の手で柄を握り、片方の手で刃を砥石に押し当てる。
ときどき包丁に水をつけて、刃のあたりを指でさわり、「かえり」と呼ばれるざらざらしたような感触を確かて研ぐ。生徒は「冷たっ!」、「変なにおいがする」と五感で包丁研ぎを体験。新聞紙で切れ味を確認すると、す〜っと刃が通って気持ちいいように切れるようになった包丁に満足していた。
初めての包丁研ぎをした田口和佳さん(13)は、「(包丁を傾ける)角度とかが難しかった」と話した。生徒が使った砥石は、それぞれ全員にプレゼントしており、家でも料理をすることがある渡辺敬太さん(13)は「砥石をもらったので機会があれば家でもやってみたい」。また、同校の2、3年生のなかには、この授業をきっかけに家庭の包丁を研いでくれるようになり、家族に喜ばれている生徒もいるという。
刃物・ものづくり教育は、平成17年から実施しているが、生徒が持参する包丁は、研げばすぐに切れ味が戻るという伝統的な製法で作られたものが少なくなり、研ぐという作業が難しいステンレス製も多い。また、今はセラミック製の包丁しか持たない家庭もあり、研げる包丁を持参できない生徒も珍しくなくなっている。