NPOさんじょう(川瀬和敏理事長)は14日、燕三条地場産業振興センターで平成23年度新潟県地域自殺対策緊急協会事業、公開講演会・シンポジウム「地域の社会力向上をめざして」を開き、約100人が参加して筑波大学名誉教授の門脇厚司さんの講演と国定勇人三条市長との対談を聴いた。
門脇さんは1940年生まれ。筑波大学名誉教授、茨城県・美浦村教育委員会教育長、専攻は教育社会学、青少年文化論。
講演では、「社会を作り、作り変えていく能力」を意味させた門脇氏が造語した言葉の「社会力」について、「人が人とつながり社会をつくる力」、「より良い社会を作ろうとする意識と意欲、より良い社会を考える力であり、よりよい社会を実現する実行力」とする資質能力と話し、今、なぜ社会力の向上が求められるのかなどを話した。
昨年の東日本大震災での死者と行方不明者約2万人にのぼったが、国内では1998年以後、毎年それを上回る3万人以上の自殺者数が14年も続いており、「もっともっと社会的な問題にしなくてはならない」と警鐘を鳴らした。
自殺は本人に原因があると言われてきたが、統計では社会の変化と密接に関係した社会の問題とわかった。人と人とのつながりが希薄になり、悩みを聞いてあげたり、相談にのってあげたりする密接な関係の人が身近にいなかったケースが多い。高度経済成長期以後、コミュニティーの崩壊や学校の変質に伴い、人間同士の直接的な交わりや協働の場が絶対的に不足しているとみる。
米国の統計データを基にすると、人と人とのつながりが強い地域ほど、社会福祉の水準が高く、子どもの学力が高く、逆に非行や自殺、犯罪などの社会的問題が少ない。そこに住む人たちがどれだけ人的ネットワークをつくることができ、支えあう環境ができるか、そこに住んでいる人たちの社会力をどれだけ向上させることができるかとポイントを述べた。
「おとなと子どもが混じり、ともに汗を流すチャンスがなくなった」ことも指摘。おとなと子ども、おとなと若者、おとなとおとなが出会い、交わり、協働する場と機会を多くし、社会力を育て、地域の人的ネットワークを構築することなどを話した。