かつては県内有数の和紙「加茂紙(かもがみ)」の生産地だった加茂市。その伝統技術を伝え残そうと公募した10人による「加茂紙」の製作技術を学ぶ紙漉き技術保存振興事業が20日、スタートした。
加茂市は昔から紙漉き(かみすき)の盛んな町で加茂紙が隆盛を極めたが、今では紙漉きの伝統技術を継承している人はほとんどいない。このままでは加茂紙が消滅するとして、再生事業をたちあげた。
商店街内の空き店舗を改修し、紙漉きの機械や道具を設置。緊急雇用創出事業を活用して参加者を公募したところ、約100人もの応募があった。面接などで選考して加茂市在住を中心に20歳代から70歳代の10人を決めた。事業費は建物の改修や設備など約3,853万円、緊急雇用創出事業約1,121万円の計約5,000万円。
事業スタートの20日は、午前10時から同事業を行う加茂市上町地内の旧協栄信用組合加茂出張所に指導者の加茂市千刈、伊藤景昭さん(84)と参加者の10人が集まり、小池清彦加茂市長、平成5年まで七谷地内で手すき和紙を製作していた田浦嘉久司さん(79)も激励に訪れた。
高齢などを理由に製作をやめた田浦さんの加茂紙は、同市出身の画家番場春雄さんはじめ全国の画家のカンバスや見附市の六角凧にも使われたという。
加茂紙は、ちり紙から高級品の紙までさまざまな種類があった。10人は1年ほどかけて材料の木から皮をむいて紙を作るまでの技術の習得に励み、さまざまな材料での紙作りなどにも挑戦する。