弥彦の丘美術館では、三条市名誉市民の日本画家、岩田正巳(1893-1988)の作品を新潟県近代美術館から借りて24日から3月25日まで「日本画岩田正巳展ー下絵から本画ー」を開き、下絵に記録された岩田正巳の作品制作の試行のプロセスも含めて鑑賞してもらっている。
三条市から借りた1点を除いて近美から借りた合わせて13点を展示している。大半は作品から離れないと全体が視界に収まらない日展やその前身の帝展への出品作。制作年代がわかるものだと岩田正巳が34歳から89歳の年の制作したもので、数こそ少ないが岩田正巳がその時その時の完成や技量を凝縮した圧倒されるような作品ばかりだ。
このうち『春日垂迹』(1927年)、『秋好中宮』(52年)、『鏡』(53年)、『群飛』(74年)の4作品は、下絵を隣りに並べているので、見比べやすい。一般に小さな紙に下絵を描く小下絵のあと、それを拡大した大下絵を描く。展示しているのは完成した本画とほぼ同じサイズの大下絵。本画の一歩の線に至るまでの数々の線を下絵で確認することができる。『春日垂迹』ではシカに乗る人物のくちびるが気に入らなかったのか、くちびるだけ顔の外にあらためて描いている。
こうした試行は絵を描く人には参考になること請け合い。本画と比較して観察すればするほど、松岡映丘に師事して日本芸術院会員までのぼりつめた岩田正巳の制作をプロセスや思考を追体験できるはずだ。
2月22日まで前期展示で、作品の一部展示替えを行って2月25日から後期展示を行う。展示替えは前期展示の8点を下げて新たに9点を展示する。今回は本画と下絵が4組だが、後期は5組となる。
同美術家は一昨年から近美の所蔵作品を借りて展示する企画展を行っており、今回もそのシリーズ。それ以前を通じても岩田正巳を特集したのは初めてで、岩田正巳の父が営んだ岩田眼科=三条市東裏館=は弥彦村にも知られた名医で、岩田正巳に対する知名度も高く、大勢の来場に期待している。
入館料はおとな(高校生以上)300円、小・中学生150円、年中無休だが、展示替えする2月23、24日は休館。また、会期中はチケットの半券を持参すると岩田正巳の第5回日展入選作品『漢拓(漢画像石拓本)』を所蔵する弥彦神社宝物殿の拝観料がふだん300円のところ無料になるので、この機会に日本画岩田正巳展と宝物殿のはしご鑑賞を呼びかけている。問い合わせは同美術館(電話:0256-94-4875)へ。