菅原道真の命日、2月25日に行われる天神講に供える菓子が伝わる燕市では、市内の菓子店や食品関係に天神講にちなんだ商品開発を働きかけており、それに応えて市内のパン屋から味と形で道真ゆかりのウメを表現した新商品、梅パンが誕生。じわじわと人気を集めている。
開発したのは25年前にJR吉田駅前で開業し、今の場所に移転して9年の「フレッシュ・ベーカリー風恋人(フレンド)」=同市吉田東町=。新商品は名付けて「梅あん ブリオッシュ」(80円)で、期間限定販売している。
「ブリオッシュ」とはフランスの菓子パンのひとつ。ふつうのパンと違って水の代わりに牛乳を使い、バターとタマゴをたっぷり使った柔らかでまろやかな味わいが特徴。見てわかる通り、ウメの花をモチーフにした。直径約10センチと小ぶりで、5枚の赤い花弁を食紅で着色し、花心はメロンパンの黄色の皮で表現した。
中には和歌山県産の紀州のウメでできた梅あんが詰まる。甘酸っぱくかすかな塩味が効いたあんこで、パンのイメージで食べると酸味が新鮮。口の中にウメの香りが広がって食欲をそそる。パンというよりも新しいスイーツと呼ぶにふさわしく、「初春」が似合う仕上がりだ。
店主の山上誠さん(51)は、旧岩室村(今の新潟市)夏井の出身。燕市の隣り村だったが、今回の市からの働きかけで初めて天神講の存在を知った。「そういうものがあるなら、どんどん広めていきたい」と開発に着手。「パンで人物像は無理なので、ウメの花なら」と考えて梅あんを詰めることを思いつき、運よく梅あんも手に入れることができた。
年が明けて間もなく試作品を店頭に並べたが、売れ行きは鈍かった。当初は今の2倍くらいの大きさがあり、値段も今の倍の150円に設定した。たまたま帰省中だった東京ディズニーランドで働く長男から、それでは大き過ぎると指摘された。そこで1月半ばから今のサイズに小さくし、あわせて値段も下げた。とたんに人気が出始めた。
それに気を良くして、メロンパンやクリームパンも小さなサイズのバージョンもラインナップしたところ、これも売れ行き好調。「いろんなパンを少しずつ、たくさんに種類を食べたいんでしょうね」と山上さん。長男に思わぬ気づきをもらった。
中学校3年生で美術部部長の長女は、ディスプレー用に道真を描いてくれた。一般に道真は福福しい丸顔に描かれることが多いが、長女の描いた道真は精悍な「イケメン」風。親子の連携プレーで「梅あん ブリオッシュ」を盛り上げる。梅あんが期間限定販売なので、「梅あん ブリオッシュ」も期間限定だが、少なくとも天神講の2月25日までは販売する考えだ。
天神講や天神祭といった道真にちなんだ行事は全国各地に存在するが、燕市内の菓子店では天神講で供える道真などをかたどった粉菓子、金花糖を今も作り続けているのが全国的に珍しい。その特徴に目をつけて昨年から鈴木力市長からのトップダウンで燕市の名物としてPRに努めている。
ことしの天神講に向け、市では伝統的な菓子にとどまらず天神講にちなんだ新商品の開発を市内の菓子店や食品関係業者を中心に呼びかけるなか、「フレッシュ・ベーカリー風恋人」が初めて手を上げ、商品化してくれた。市ではこれに追随して新商品が誕生することに期待している。
新商品開発に関する問い合わせは、市商工観光部観光振興室(電話:0256-92-2111、内線569)へ。「フレッシュ・ベーカリー風恋人」への問い合わせは電話「0256-93-3281」。