県内は昨冬に続いて大雪に見舞われているが、三条市内の山手の下田地区にある秘湯、越後長野温泉「嵐渓荘」(大竹啓五社長・三条市長野)も周辺をすっぽり雪に包まれ、冬ならではの秘湯の味わいを増している。
嵐渓荘は日本秘湯を守る会会員の宿。雪で迷路のようになった庭のなかに、大正末期の駅前料亭を移築した風格あふれる木造3階建ての建物が立つ。
この冬はすでに3回、屋根の雪下ろしをした。下ろした雪を置いておく場所はないので排雪も一緒に行う。地元の高齢の人を中心に7、8人に雪下ろし作業を頼む。それでも丸2日がかりの大仕事だ。
三条市内の市街地の積雪は1メートルの大台を超えているが、山手の下田地区の雪は、それよりはるかに多い。さらに同じ下田地区でも入り口となる下田庁舎付近と比べると、嵐渓荘周辺はその5割増しはありそうだ。
嵐渓荘前の県道鞍掛八木向線は、路肩に除雪された雪が壁のようにそびえる。11日、その高さは平屋の屋根くらいもあった。圧迫感を感じるほどの雪の量だが、逆に「秘湯」の演出にはもってこいだ。嵐渓荘へ向かう道中、あまりの雪深さに不安になるほど。しかしそれに比例して秘湯への期待感は膨らむ。
昨年の夏は新潟・福島豪雨で被災、床上浸水して営業を休止して復旧した。この冬は男性用の大浴場露天に屋根をつけた。これまでは小さなひさしだけだったので、3階の屋根からの落雪が心配だったが、ひさしを延長するような形で木製の屋根を設けた。安全のための策だったが、逆にこれが額縁のような効果を発揮して外の景色を絵画のようにひきたて、安心して雪景色を楽しめるようになった。ただ、さすがに今は雪が景色を隠している。
2年続きの大雪だが、「昨年は休まないで雪が降ったので雪下ろしをする間がなく、それと比べればことしの雪の方がましです」と大竹社長。昨年は落雪でひさしが壊れるといった被害もあった。
週末の利用は多いが、地元の客を見込む平日は、平場でも連日の雪かきに忙しく、雪下ろしも始まっている状況で、客足は鈍い。雪との闘いの疲れをいやすためにも、「雪が一息ついたらぜひ秘湯巡りの旅に」と来館を待っている。