燕市分水良寛史料館(西海土寿郎館長)は、3月11日まで「館蔵書画展ー富取芳斎一族及び安田靫彦など近現代作家ー」を開いており、初めて同史料館の所蔵品だけにしぼった展覧会を開いている。
地元分水地区、国上山の中腹に五合庵を構えて晩年の一時期を過ごした禅僧、良寛(1758-1831)と、やはり分水地区の地蔵堂に生まれた南宗画家、富取芳斎(1809-80)とその一族の作品を柱に、約60点を展示している
良寛関連は、これまでも何度も展示している良寛ファンにもおなじみの作品だ。詩幅「偶作僧伽」と「家在荒村」の対幅、和歌「このみやの」の額装、和歌幅「悲散寒登能」。良寛とのロマンスも語られる貞心尼の和歌の短冊や良寛に書を学んだ坡丈の俳句の短冊。良寛の詩親族の山本以南、山本由之、山本泰寿の作品、親族の作を集めた張り交ぜ屏風。正面には、良寛遺愛の鳳凰(ほうおう)が刺しゅうされた飾りまりも展示している。
芳斎は正為の長男に生まれ、家は酒造業と米穀問屋を営む北越に名だたる豪商。8歳で三条文人の五十嵐華亭(1780-1850)の門に入り、華亭と同様に花鳥画を得意にした。江戸で学び、長崎へ遊学して中国の名家の真筆を学び、画品の高い大家だった。
その自画像の軸を展示しているが、芳斎の自画像は珍しく、初めての公開。芳斎の勉強ぶりがうかがえる画帳も展示する。そして芳斎の長男で分水の私塾「長善館」創設者の漢学者鈴木文臺に学んで山水画を好んだ清旭(1835-1913)、二男で東京に移って画業に励んだ芳谷(1856-1925)、さらに芳谷の二男で芳斎に似た画風で俳句の才能もあった芳邨(1890-1960)の作品を展示している。
近代作家で注目は、前田青邨と並ぶ歴史画の大家、安田靫彦(1884-1978)が書いた和歌。これも初公開で、良寛の書の研究家としても知られ、良寛の筆法にならったような繊細な線が興味深い。
良寛を敬慕した新潟市出身の歌人、会津八一(1881-1956)が「五合庵にて」と書いた和歌も貴重。熊本生まれの日本画家、福岡青嵐(1879-1954)が良寛のエピソード書画でつづった長さ約6メートルの巻物は、これまで一部しか公開していなかったが、今回は全体を広げてほとんどが見えるような形で公開している。
栄蔵灯下読書に始まり、伊勢行脚、帰郷途、国上山居、街頭托鉢、庵中静座、街頭柳娘、庵中詩論と続き、良寛の生涯をダイジェストで知ることができ、良寛ファンならじっくりと鑑賞したい。
同史料館は1980に開館。特別展では、地元の所蔵者から書画を借りて展示するのが中心で、そこに館蔵品を合わせて展示することはあったが、今回は館蔵品の虫干しも兼ねて初めて館蔵品だけの展示を行っている。午前9時から午後4時半まで開館、月曜は休館。入館料はおとな300円、学生200円、子ども100円。