ビリヤードに似て盤上のパックをはじいて四隅の穴に入れるゲーム、カロムを燕三条地域にも普及させ、福島県いわき市で生産されるカロムを購入することで東日本大震災で大きな打撃を受けた東北の経済に少しでも貢献し、産業復興の足がかりにもなればと、このほど燕市でカロムの体験会が開かれた。
県内の保育者、教育者、主婦などでつくるコンサート実行委員会「はっぴぃスマイル」のメンバーで、三条おやこ劇場の会員、食育ボランティアなど幅広い活動に取り組む霜鳥英梨さん=燕市燕=が中心となり、ともに活動する発信力のある仲間や知り合いに声をかけ、20人近くが参加。燕市関崎、重蓮寺を会場に開いた。
カロムは四隅に穴「ポケット」がついた正方形のボードを使う。中央に2色のたくさんの玉「パック」を並べ、自身の玉「ストライカー」をはじいてパックに当ててとばし、ビリヤードの要領で自分の色のパックをコーナーに落とすことに成功すると、続けてはじくことができる。
自分の色のパックをすべて落とすと、ひとつけだけある玉「ジャック」を落とすことができ、ジャックを落としたら勝ち。1対1の対戦のほか、対面に味方が座って2体2のペアでプレーすることもできる。
1回、指導を受けながらプレーすれば、基本的なルールを覚えることができる。プレーはストライカーをはじくだけなので、正確さはともかく誰でもすぐにプレーできる。
ペナルティーや、ボードの外にパックやストライカーが落ちたときのルールに迷うことはあるが、基本は単純。子どももおとなも一緒になって、大きな声を上げて喜んだり、悔しがったりと熱中。同時に自分のパックを落とすだけでなく、相手がパックを落とせないように邪魔する戦略にも気付き、技量に合わせた戦略の選択など、短い体験でも奥の深さを感じていた。
カロムは11世紀のエジプトが起源ともされ、世界中に広まっているが、日本には昭和初期に全国に普及したものの、滋賀県彦根市を中心とする地域にしか残っていない。子どもからお年寄りまで誰もすぐにプレーでき、ゲーム性の高さにも注目した絵本作家の中川ひろたかさんは、カロムを東北の子どもたちに贈ろうと、昨年4月に「みんなともだちプロジェクト」を立ちあげた。
贈るのは簡単だが、カロムを東北で作れないかと声を掛けたのが、いわき市で絵本の読み聞かせを行う原田由香さん。原田さんはいわき市内で木工所を10カ所くらい回って生産をしてくれる会社を探し、精神薄弱者授産施設が引き受けてくれた。
ボードの上には、絵本作家の村上康成さんがデザインしたプロジェクトのロゴマークを入れた。「MADE IN IWAKI, FUKUSHIMA」の文字は、「復興カロム」の発信地を意味する。ボードは62×62センチで、パック24個、ストライカー4個、ジャック1個がついて1台1万7,850円、別売の専用バッグ(3,500円)もある。
すでに9月16日にいわき市でカロムの全国大会を開くことが決まっている。全国からの参加者の経済的負担を軽くするため、1泊1,000円の宿泊施設も確保し、準備は着々と進んでいる。
全国大会に向けて3月、4月にはいわき市で福島大会も開かれるほか全国各地で予選大会を計画している。そのひとつとしてぜひ燕三条でも地区大会をやり、県央地区代表を全国大会を送り込もうと。その仕掛け人となったのが霜鳥さんだ。コンサート実行委員会「はっぴぃスマイル」の活動を通じて中川さんと親しく、既知の中。中川さんは昨年11月に三条市下田公民館で「親子で楽しむJAZZコンサート」にシンガーや絵本の読み聞かせで出演している。霜鳥さんも趣旨に賛同し、カロム普及に一肌脱ぐことになった。
仲間とともにすでに5台のカロムを買ったが、予選大会に早めに10台くらいに増やしたいと言う。「学校や子育て施設にカロムが入ればいですね」と霜鳥さんは期待する。燕市児童研究館「こどもの森」でも今後、毎月のようにカロムを行う計画。霜鳥さんは「被災地でもカロムを持っていくと子どもたちが集まってくるんですよ」とカロムの普及を確信している。参加者やカロムを購入してくれる人を呼びかけている。燕三条地区でのカロムに関する問い合わせは霜鳥さん(電話:090-3144-9513)へ。