この冬の大雪で燕市八王寺、真宗仏光寺派安了寺にある県指定の天然記念物「八王寺の白藤」のフジ棚が積もった雪の重みでつぶれ、全体の6分の1、100平方メートルほどが崩壊した。
「八王寺の白藤」は同寺の正門を入って真ん前にあり、幹回り約6メートル。東西約30メートル、南北約20メートルもあるフジ棚いっぱいに枝を広る。5月に白い花を咲かせ、昭和33年に県指定天然記念物となった。
雪で壊れたのは正門をくぐって左奥の北角の部分。無残に棚がぐしゃりと地面に向かって曲がっている。フジのつるにはすき間があるので雪は積もりにくいが、それでも壊れなかった部分を見ると数十センチから多い部分では1メートル近く積もっている。
ただ、つるは柔軟性が高いので、棚の被害の大きさの割には意外と折れた部分は少なく、樹勢への影響はなさそうだ。昨年は補強のために「単管(たんかん)パイプ」と呼ぶ建築現場の足場用の鉄パイプで棚を補強した。さすがに単管が折れることはなかったものの、ぐにゃりと大きくたわんでいる。
松島孝夫住職によると「(18日の)夜につぶれたんだろうけど、何も音がしなかった」。翌19日朝になってフジ棚がつぶれているのを見つけた。かつてフジ棚は木だけで作られていたので、雪の重みで折れ、壊れることは珍しくなかった。今回、壊れてみると、柱はコンクリート、L字の鉄のフレームや単管で補強したのがあだとなり、一部が壊れるにとどまらず、まだ雪の重さに耐えていた部分も引っ張って被害を大きくしたようだ。松島住職の母、綾子さんも「(昭和)38年以来じゃねーかね」と三八豪雪のときに匹敵する被害と驚く。
「八王寺の白藤」の保存にあたる八王寺大白藤保勝会(大原大八会長)の会社員川崎勝司さん(55)=燕市八王寺=は、「つぶれてない部分の雪を落としたいけど、下手するともっとつぶれそう」なので、このまま雪解けが進めば雪消え後に修復作業を行う考えだが、「もっと降るようだったら大原会長と相談しないと…」と頭を悩ませる。
もっとも松島住職も毎日のように雪かきに追われ、本堂もすでにこの冬2回、雪下ろししている。保勝会会員も同様で、フジ棚の雪を心配しているどころではないというのが本音だろう。20日夕方、燕市教育委員会は被害状況を現地調査した。県へ報告する一方、対応を検討する。