この冬の大雪で燕市八王寺、真宗仏光寺派安了寺(松島孝夫住職)境内にある県指定天然記念物「八王寺の白藤」が枝を広げるフジ棚の約半分が雪の重みでつぶれたのに伴い、燕市教育委員会では14日から造園業者によるせん定や枝落とし、樹木医による診断や治療を行っている。
「八王寺の白藤」は東西約30メートル、南北約20メートルのフジ棚につるを広げ、5月には白い花房を下げるフジの名木で、市外からも大勢の見物客を集める。境内を入って真正面にあり、2月19日朝にフジ棚の約6分の1がつぶれているのがわかり、その後も被害は広がって境内から奥側のほぼ半分がつぶれた。
それから約1カ月。雪解けを待って14日から対応に乗り出した。つぶれた部分を枝を残したままフジ棚を再建できないので、主要な枝を残して細い枝は落とし将来に向けて不要な枝をせん定。つぶれた部分のフジ棚を構成していた木材や短管パイプを外す作業だ。作業完了まで数日はかかりそうだ。
同時にフジの健康状態の調査を佐藤樹木医事務所=五泉市矢津=の佐藤賢一樹木医に依頼した。佐藤樹木医は15年前に県内の天然記念物の一斉調査が行われたときにも「八王寺の白藤」を訪れ、その結果、も「八王寺の白藤」では土壌改良が施された。
佐藤樹木医は「せん定があまりされておらず、下に日が差さないほど枝が込んでいたため、雪が枝のすき間を通り抜けずに上に乗ってしまい、そこへ大雪が降った、気温も低くて雪が下に落ちなかった」と今回のフジ棚崩落の背景を分析する。
同時に木の診断も行った。枝は割れた数が増えたところもあり、中心から16の枝に分かれて伸びている。水がたまって腐っている部分や木をだめにする樹木腐朽菌のきのこが生えた部分も。腐ったところにはウオツカに墨を混ぜたスペシャル殺菌剤を塗る。化学薬品ではないが、「研究室では化学薬品でもうまくいくが、自然界ではそうはいかない」と佐藤樹木医。ただ、ウオツカに墨の成分を分析すれば、科学的に殺菌力を説明できると言う。
しかし、樹勢は良好で、腐敗や枝折れは「勢いでカバーできる」とのこと。フジ棚が崩壊した部分は花芽を残しいる手間もなく、この春はフジ棚の前側半分だけ花を下げる形になる。「ことしの花は期待できませんが、来年以降に期待して作業を進めています」と佐藤樹木医はすでに数年後の姿をイメージしている。