加茂市のアーティスト、まりあ由実さん(27)の作品展「絆展〜震災から1年たった『今』から」が23日まで三条市の大野畑、済生会三条病院で開かれており、左利きのまりあさんにとって絵を描くために命と同じくらい大切な左手を人や物とつないだ写真などを展示している。
写真は10枚のパネルに合わせて296枚の写真を張り付けた。右手にカメラを構え、左手を伸ばして誰かの手とつなぐ。顔は写っていないが、手の大きさやごつさ、肌のしわや腕のブレスレットなどから、その手をもつ人のイメージが膨らむ。
人のほかにもススキ、モミジ、タンポポ、アサガオなど草木にふれたものもあれば、ネコ、チョウ、ぬいぐるみ、粗品、ギターなども写り込んでいる。
もうひとつは「桜で、桜と蝶を描きたいと昨年4月に村上市で初めて開いた個展のために制作した、7つのカンバスを横に並べてつなげた作品。数年間、撮りためたサクラの花の写真を和紙に印刷してちぎり、張り合わせて渦を描いて花びらが舞うようなダイナミックなイメージを表現。その上に白でチョウを描いた。
ほかにも、先に開いた個展に展示した、来場者から自由に描いてもらった、「8個目のキャンバス。」、左手に白い絵の具を付けて板に「絆」の文字を表現した作品もある。
まりあさんは新潟デザイン専門学校を卒業後、東京の広告代理店に就職したが、体を壊して帰郷。2年ほど前からそれまで休んでいた創作活動に本格的に取り組み、今は個人でウエディングの招待状やウエルカムボードのデザインを仕事にしながら、絵画やはり絵、鉛筆がなどに取り組んでいる。
昨年の東日本大震災で多くの命が失われ、さまざまな絆が引き裂かれた。その絆を取り戻せないだろうかと、まりあさんは震災後間もなく、左手をつないだ写真の創作を思いついた。
自身の友人や知人をたずね、遠くは東京都や静岡県へも足を運んで撮影。ことし1月に地元加茂市で開いた自身2度目の個展で撮りためた写真を作品にして披露した。
写真の撮影を通して「しばらく疎遠だった人とも連絡がとれ、途切れた自分の絆の修復にもなりました」とまりあさん。「人に対して優しくなれ、大げさにいえば相手の命を思いやることの再確認にもなりました」と自身の心の傷も癒してくれた。
「作品を作ることが自分自身の支え」であり、「作っているときだけは無心になり、いちばん自分のやりたいことがやれている気がします」と話している。