岩室温泉の高志の宿(こしのやど)「高島屋」は30日まで、国指定登録有形文化財の築250年余の館内で、伝統的工芸品「越後三条打刃物」の指定組合「越後三条鍛冶集団」(25社)の鍛冶職人が製作した包丁やなたなどを展示し、販売も行っている。
同旅館は、江戸後期に建築された庄屋屋敷を生かした主屋などが国の登録有形文化財に指定されている。そのなかの1室に常設の「高島屋ギャラリー」を開設。国内外から同旅館を訪れる人に新潟の「ものづくり」を知ってもらおうと、県内のものづくり文化ともいえる製品を産地ごとに展示、販売している。
これまで小千谷縮、加茂の桐製品、亀田紬、燕の洋食器などを紹介しており、三条の鍛冶技術を結集した「越後三条鍛冶集団」の展示は今回が初めて。「高島屋」の先祖は約300年前、間瀬の銅山から銅を採掘して三条の鍛冶産業に運んで財をなし、庄屋職になったという縁もある。
「越後三条打刃物」は2009年に伝統的工芸品の指定を受けた。その主要製品である包丁、切出小刀、かんな、のみ、なた、まさかり、かま、木ばさみ、やっとこ、和釘の10品目をはじめ、爪切りや剪定(せんてい)ばさみのほか、包丁製作の作業工程の紹介、鍛冶集団の紹介パネルも並べている。
高島屋の女将、高島基子さんは燕市出身。宿泊客に「いい洋食器がほしい」と言われても地元で高級品を品ぞろえしている小売店が頭に浮かばなかった。いいものを見て育っただけに悔しく、「本物を置きたい」、「いいものをわかっていただきたい」という思いを「高島屋ギャラリー」という形にした。「本物の文化の中で、本物の道具に出会う幸せを多くの方に味わっていただきたい」と話している。
「越後三条鍛冶集団」の展示販売は毎日午前9時から午後6時まで、一般にも無料公開。毎週土曜は午後3時から6時ころまで越後三条鍛冶集団の会員が商品説明を行う。