伝統的工芸品に指定されている「越後三条打刃物」の製造に従事する専門職4人が伝統工芸士の試験に合格、このほど認定を受け、「越後三条打刃物」では、初めての伝統工芸士が誕生した。
伝統工芸士となったのは、小林由夫さん(73)=小由製作所・三条市西四日町=、池田慶郎さん(70)=池田蚤製作所・荒町=、水野勲さん(69)=水野製作所・荻堀=、日野浦司さん(55)=日野浦刃物工房・塚野目=の4人。いずれも三条鍛冶集団のメンバーで、技能者として県のにいがた県央マイスターに認定されている。
「越後三条打刃物」は、平成21年に越後鍛冶集団=小林由夫会長・25事業所=が指定組合となり、伝統的な鍛冶技術で作られる包丁や切出小刀など10品目を主要製品として、経済産業大臣から伝統的工芸品の指定を受けた。
4人はその伝統的工芸品の製造に携わり、昨年10月に全国統一知識試験と実技試験を受験し、合格。3月に伝統工芸士の認定証の交付を受けたもので、23日に4人がそろって三条市・餞心亭おゝ乃で記者会見した。
「つかみ箸」などを作る小林さんは、三条の伝統的な地場産業が産地指定、伝統工芸士の認定を受け、「これから三条の手仕事である鍛冶という産業が、ありがたい肩書を生かしていければと思います。鍛冶集団のなかには、伝統工芸士になりうる技術を持った人はたくさんおられるので、後に続いていただいて、アピールしていければ」と話し、「わたしも年は取りましたけど現役で働いておりますので、若い人たちにも大いに生かしていただきたいと思っています」。
蚤(のみ)鍛冶5代目の池田さんは、「伝統工芸士の看板というものに、大変重みを感じ、その重みに耐えられるように自分を鍛えていきたい、そして腕を磨いていきたい」。一方で、「工芸士ということに少し抵抗を感じている。のみという、刃物という道具を作っています。刃物という道具は、使ってくださる人、大工さんは本当に厳しい仕事をする人で、即答えが出る。どうやって伝えていったらいいか」と複雑な心境とも話した。
水野さんは、たくさんの形状をもつ鉞(まさかり)や斧を作っており、「昔から地方にある野鍛冶という優秀な技術を持った鍛冶屋さんたちが、専門の技で専門の道具を使う職人さんたちにと作っており、現在(自分が)あるのはその先輩たちのおかげで感謝している」、「我々のような人たちが集まって、後継者育成に力を注いでいきたい」。
日野浦さんは、鉈(なた)を作っており、「これを機に、伝統工芸士の名に恥じないような、決しておごることのないよう、精進していきたい」と話した。
4人それぞれが鍛冶集団のなかには伝統工芸士になれる人はたくさんいると話し、続いてもらいたいと話すとともに、後継者を育成したいと話していた。
また、6月28、29、30日に三条商工会議所で開催される越後三条鍛冶集団20周年「技術展」で、「越後三条打刃物」の商品を展示し、「伝統的工芸品」とともに、伝統工芸士誕生のPRもする。