ギャラリー・バー「ベロニカ」=三条市旭町1=のオープン3周年記念イベントとして3、4の2日間、同店で福島市の画家と新潟市の植物アート作家がコラボレーションした作品展「JUN KANEKO X tomizou」が開かれている。
画家は金子潤さん(35)=福島県福島市=、植物アート作家は冨田昌希さん(36)=新潟市南区=。友人を介してベロニカの店主、丸山泰宏さん(36)と金子さんが知り合ったのが縁で毎年、周年イベントで金子さんの作品展を開いている。これまでも一部に冨田さんの作品を展示したが、今回はコラボとして企画した。
金子さんは服飾の学校を卒業後、職を転々としたが、「自己責任で表現できる仕事を」と好きだった絵に取り組もうと8年前に独学で描き始めた。絵は最初から最後まで自分ひとりで完結できる。
東京でも個展を開き、米国・サンフランシスコ、英国・ロンドンで開かれたグループ展にも参加。ことしも6月に沖縄、9月に東京・青山で個展を開く。
今回は約15点を展示。金子さんが使うのはアクリルの黒い絵の具だけ。オリジナルの道具や技法を駆使する。ひものようなものが巻き付いたはさみ、包帯のようなものが巻き付けられた顔がなどを描く。
「基本は拘束されているものを描く」と金子さん。拘束されているのは、自分であったり、社会であったりする。黒にこだわるのは、好きな色であり、「黒いものを見た方が人の心に届き、あたたかみや質感が伝わると思う」から。
細部を見るとインクがこすれたような、印刷物やコピーのような印象もある。金子さんはあえて筆の跡など人間味を排除し、加えて無国籍であろうとする。自身の意図が直接、表出しないようにしているせいか、描かれたものが自らメッセージを放つような強い印象を受ける。
チョウの標本のように12匹のチョウを切り取って額に納めた作品がある。抽象的なデザインが描かれているように見えるが、元は金子さんがふつうに描いた作品だ。昨年の東日本大震災で、傷ついたり、たわんだりした作品をチョウの形に切り取って再構成した。
「地震で失ったものは元に戻りませんから。元に戻るのではなく、新しく生まれ変わるという感覚、元の絵で新しい価値観をつくってあげるということ」。金子さんの復興に対するメッセージでもあり、震災から4カ月後の昨年7月に東京・渋谷の「COMMON」で開いた個展にも展示したが、「地元の人からも喜んでもらえて、やって良かった」と正しかったことを確信する。
「ゴールデンウイークはここ(ベロニカ)で過ごすものというふうになってます」と金子さん。「三条の人もすごくいいし、毎年、楽しみにしています」と言う。
そしてもう一方の冨田さんは、ことし2月にも同店で個展を開いている。父の後を継いで造園業が本業だが、若い人からも造園業に親しんでもらおうと「tomizou」の名で植物を使っ創作活動を手掛ける。ことし4月に新潟市上古町周辺で開かれた県内の作家19人による合同展「春山登山展 2012」にも参加し、アーティスト活動を積極的に展開している。
これまでは金子さんの作品に文字通り花を添えるような展示だったが、今回はがっちりコラボ。店内中央に展示した木枠を組み合わせたような集合体がメーンだ。金子さんの作品とともに冨田さんの作品を配置した。
これまでも木の板にドライフラワーを飾る作品があるが、今回は金子さんの作品からイメージして、板を腐食させた金網で覆った。ビーナスの胸像の頭部をくり抜いて中に花を入れた作品やガラスの浮きや布、ひもなどを組み合わせて金子さんの作品と一体化している。
金子さんの作品は良く知っているので、初めてのコラボにも戸惑いはない。「予想できてやりやすかった」と冨田さん。「植物を何と組み合わせたらいいのか探しています」と言い、幅広いジャンルとのコラボやプラントセラピーにも関心を広げている。2日間とも午後8時から営業。