三条市下田地区のギンナン畑で13日、県央地域では珍しいイチョウの人工授粉が行われた。
イチョウを栽培しているのは、三条市長野、渡辺隆一さん(69)。イチョウの種子、ギンナン採取を目的に十数年前から始め、今では百本以上の木を育てる。
イチョウは、雄花と雌花があり、雄花は淡い緑色の房状になり、雌花は同じく淡緑色で2個の胚珠と呼ばれるカマキリの頭のような形。4月末から5月初めにかけて花をつけ、風に乗って受粉するが、より確実に結実させようと人工授粉を行っている。
先に雄花から採取した黄色い花粉を水道水ではなく、山から流れるわき水で希釈し、2時間以内に雌花のついたイチョウに散布する。花粉の採取もタイミングがあり、雄花の開き加減などを何度も確認して、絶好のタイミングを逃さない。
雨や強風だと花粉が流れるため、人工授粉するには好天が条件。13日は穏やかな晴れ間が広がる受粉日和で、渡辺さんは希釈した散布用の花粉を自宅で作り、少し離れた畑に直行した。
柔らかな緑色の葉が枝を飾るイチョウがずらりと並ぶ。高さ6、7メートルまで伸ばした枝に無数の雌花をつける。その全体に高圧洗浄機を使って花粉を散布した。
渡辺さんの話では、県央地域では、モモやナシの栽培で人工授粉する農家はあるが、ギンナンの栽培、人工授粉を知らない人も多いと言う。イチョウの花を目にしたことのない人も多いだろうが、「ギンナンのなる木に見られるので、街路樹など身近なイチョウで探してみたら」と身近な理科学習を勧める。
渡辺さんはギンナンを実が黄色く熟しきる前の9月末から10月初めに収穫し、料亭や下田地区の直売所で販売する。実の中のギンナンは薄い緑色で、「翡翠(ひすい)ギンナン」の名で人気が高いという。
また、渡辺さんは「ギンナン爺」の名でブログ「爺のギンナン日記」を開設しており、ギンナンの成長をはじめ、花や風景など下田の自然についても写真とともに紹介している。