三条市・八幡宮で14日を宵宮に15日は春季大祭が開かれるのを前に、ことしも地元ゆかりの有志7人でつくる敬神会は、拝殿の鈴をぴかぴかに磨き直し、14日午後、新しい鈴緒を編んで奉納した。
鈴にはちょうど40年前の「昭和47年5月吉日」と刻まれる。少なくともその前の代の鈴があったことはわかっているが、敬神会が鈴を奉納した始まりを知る人は今はない。奉納した6人の名前が刻まれているが、今の会員は31歳から75歳までの男7人。よそへ引っ越した人もいるが、いずれもルーツは八幡宮のおひざ元ともいえる旧八幡町にある。
鈴緒を編むのは、三条祭り前の恒例行事だ。5月1日に拝殿から鈴を下ろして14日まで磨き上げる。鈴磨きは順番に担当。14日の午後からみんなが集まって新しい鈴緒を編んで奉納する。鈴緒は古くなったつど新しいものに替えるのが一般的と思われ、毎年、鈴緒を新調するのは珍しいようだ。敬神会はほかの活動はなく、このためだけに存在する。
7人は、中条敏郎さん(75)=直江町3=、池田健治さん(72)=八幡町=、研磨業白井元明さん(71)=同=、溶接業羽賀俊司さん(64)=西裏館1=、会社役員相場浩さん(43)=西四日町=
自営業丸山鉄兵さん(33)=西裏館1=、のこぎり製造業白井憲太さん(31)=八幡町=。
ことしの鈴磨きは相場さんが担当。真ちゅう製の鈴はこの1年でつや消しかと思うほど光沢を失っていたが、金属を磨く液をつけて延べ十数時間はかけて鏡のようにぴかぴかに磨き上げた。
鈴緒を編む作業は、午後1時から白井元明さんの研磨の作業場で行った。以前は各家の持ち回りだったが、引っ越した家や広いスペースが必要なことから、今は毎年、白井さんの家で行っている。
作業は荒縄を束ねたものを3つ作ることから始める。束ねた荒縄にそれぞれ赤、白、黒の色の布を巻く。3人がそれぞれの束を握り、「よーいさっさっ、よいやさっさっ!」のかけ声で拍子を取りながら、ぐっと引いては左隣りの人に束を渡す。それを繰り返せばだんだんと編み上がっていくというわけだ。
思い切り力を込めて引くので、最初から最後まで一気には編めない。休憩をはさんだり交代したりしながら作業を続け、作業に手こずる若手にベテランが「オレはもっとわーけとき、やったんだれや」とからかう。
鈴緒のいちばん下には組みひもの房をつけ、麻を垂らす。麻は高価で、下に垂らせば「全部、麻でできてるみてに見えるねっかね」と笑う。鈴緒の長さは3.6メートル。2時間がかりで完成すると肩に担ぎ、鈴は棒に通して棒の前後を2人で担いで参道へ回り、150メートルほど歩いて正面から境内へ。拝殿で神前に供えてはらい清めてもらったあと、はしごにのぼって鈴と鈴緒を取り付けた。
拝殿のひさしの下にはぴかぴかな鈴が下がった。その上は真っ青な五月晴れの空。鈴緒に揺さぶれた鈴は、中に入った2つの石が転がって大きな音を響かせる。「いい音がしんねっか」と会員の表情も輝いていた。このあと料理屋で祝杯もあげた。