三条市歴史民俗産業資料館は、15日から6月17日まで企画展「屏風−くらしのなかの絵画−」の後期展を開いており、屏風を絵画としてだけでなく、本来の機能であるフレキシブルな調度品としての視点からあらためて見詰め直している。
4月13日から5月13日まで開いた前期展に続いて展示替えして開いている。14、15の2日間、三条祭りが開かれたが、別名「屏風まつり」とも呼ばれたように5月14、15の2日間の三条祭りで、大名行列が通る大通りの家々が玄関先になどに屏風を飾って客をもてなしたのにちなんだ屏風展。4月13日から5月13日まで前期展を開いたのに続き、前期の6点のうち5点を展示替えして後期展を開いている。
展示しているのは、染色工芸家の広川松五郎をはじめ、三条文人の帰山雲涯、五十嵐華亭、森山信谷、巻梧石の作品だが、同展は作家ではなく屏風であることに着目する。
屏風は、ものをさえぎり、ふせぐ「障屏具(しょうへいぐ)」のひとつ。現代では間仕切りのような印象が強いが、その名が示すように主たるさえぎる対象は風。冬の冷たい「風を屏(ふさ)ぐ」。屏風は冬の季語でもある。
屏風は使うときに扇(せん)と呼ばれる絵が描かれたパネルを山と谷で交互に屈曲させることで自立させる。この状態を想定して絵の構図が考えられている。描いた対象物が無駄につなぎ目にかかるのはもったいないので、構図には自ずと制約がある。
それを逆手にとって山と谷を積極的にデザインに生かしたのが、空間の遠近の表現だ。前から見て奥に引っ込む谷の部分に遠景、手前に出る山の部分に近景を描く。五十嵐華亭の「雲龍図」はそれを生かした典型的な作品だ。左右の2匹の龍が空を泳ぐ姿を描く。いずれも凸部に顔、凹部に向けて胴や足を描くことで、龍が飛び出して見えるようなちょっとした3D効果を生む。2枚の扇にまたがる線に、曲げた状態で真っ直ぐ見えるような配慮もうかがえる。
五十嵐華亭の六曲一双屏風「深山に鷹図屏風」でも岩場や木、タカを凸部に廃し、鷹が凸部に向いて羽ばたくようなデザインは、手前に飛び出してきそうな勢いさえ感じる。巻梧石の「花卉之図屏風」は珍しい扇が8面もある8曲屏風で、どこから見ても華のラインが崩れない。
いずれにしろ、どの作品も扇を平らに並べてみると、作品が横に長くなり、横方向に間延びした印象になり、当時の人たちが屏風の制約や特性を逆手に取って多様な表現にチャンレジしたことがわかる。初めて知る人は、その創意工夫に目からうろこ。作品を通じて100年、200年前と江戸時代に三条で活躍した文人たち、当時の人たちの制作意図を時代を超えて感じることができる。
午前9時から午後5時まで開館、休館日は毎週月曜と月末日。展示資料は次の通り。