「ごぼうさま」と呼ばれて親しまれる真宗大谷派三条別院(鷲尾幸雄輪番・三条市本町2)で16、17の2日間、初めて「御坊市(ごぼういち)」が開かれる。境内ではなく本堂と旧御堂を会場に県内から約40の雑貨、古道具、工芸品、手芸品やフード、ドリンクを販売する店が出店し、若手の僧りょによるワークショップなどもあわせて行われる注目のイベントだ。
2日間とも午前10時から午後4時まで。350畳の広さの本堂を「いろいろなモノ」、本堂に向かって左側に隣接する160畳の旧御堂(きゅうみどう)を「オイシイモノ」に分け、旧御堂では食べ物や食事を提供する十数店、それ以外は本堂に出店する。
県内の有名なショップが並ぶが、なかでも木工品のゲイミンカン=上越市=や陶器のナナカマド=新潟市秋葉区=は毎年、長野県松本市で開かれている「クラフトフェアまつもと」へも出店。全国から選び抜かれたショップが出店する、いわばこの世界でステータスともいえるイベントで、その逸品を三条で目の当たりにして入手できるチャンスだ。
木製のバターナイフやはしをつくるワークショップを行う店もあるが、詳しくは各ショップが検討しており、当日のお楽しみ。保育士が常駐するキッズコーナーも設けるので、そばで子どもを遊ばせながらゆっくり食事もできる。
そして若手僧りょによる「お坊さん企画」が3つ。ひとつは、お坊さんワークショップ「念珠を作ろう」。2日間とも午後1時から3時まで行い、参加費200円、所要時間約15分。色や素材の異なる玉を通してオリジナルの念珠や腕輪念珠を作る。
ひとつは、三条・美坊主(びぼうず)に聞く「僧職男子になんでも相談」。これも2日間とも午後1時から3時まで。1日に20代から30代の若手の美坊主4人が担当し、けさに衣を着けて人間関係、恋愛相談、仏事、僧職男子の日常についてなど、さまざな相談や質問に答える。三条別院でも初めての試みだ。
そしてもうひとつは、井上雄彦が描く親鸞(しんらん)「屏風『親鸞』の関連グッズ販売」。真宗大谷派の本山、京都の東本願寺は、「宗祖親鸞聖人七百五十回御遠忌」を記念する現代アート事業として、『SLAM DUNK』、『バガボンド』、『リアル』などの作品で知られる漫画家、井上雄彦さんに親鸞を描いた屏風の制作を依頼した。その屏風を「親鸞」の関連グッズのポストカードやポスターを販売する。
三条別院は、柏崎市から佐渡市、村上市までの三条教区450カ寺を統括する。さまざまな人たちが寺へ足を運ぶきっかになればと、昨年まで20年余りにわたって毎年、同寺で別院フォーラムが開かれ、コンサートや映画、出店などさまざまなイベントが行われてきた。
今回は若手僧りょが中心となり、新しい形を考えてみたいと大きくかじを切った。主催はこれまでと同じ別院フォーラム実行委員会(関了悟実行委員長)だが、イベントの名称を初めて「御坊市」と変えた。最近、「寺市」などと称して、寺を会場にしたクラフト関係のイベントがにぎわっているのに目をつけた。
三条教務所の五辻広大さんは「若い僧りょと新しい年齢層との会話で新しいつながりが生まれれば」と言い、同じような形で来年以降も続けることで「三条教区、さらに全国のお寺にアピールできれば」、「若手僧りょがいずれ各自の寺でフォーラムやそれ以上の形のものができればという願いもあります」と起爆剤にもなればと期待は大きい。
「お寺でやる意味を大事にしたい」と五辻さん。これまでの別院フォーラムは外の境内が会場だったが、今回は初めて本堂の中を使う。本堂は正面の入り口を入ってまずは中央の通路をまっすぐ歩いて参詣席(さんけいせいき)からふだんは僧りょしか入ることのない外陣まで入り、内陣の須弥檀(しゅみだん)に安置する本尊を“見仏”してもらう。
開場前の午前9時半から、閉場後の午後4時からそれぞれ本堂で僧りょと出店者でお勤めも行う。もちろん一般の人も参加できる。「せっかくなので、こんな機会でなければできない体験もしてもらいたい」と五辻さんは言う。
一方、出店者側のとりまとめ役は、共催となっている古道具や雑貨の「ハチミツ」=新発田市=、それと地元の三条市荻島、「雑貨店Blue」だ。「雑貨店Blue」を経営する真野聡子さん(41)は、三条別院周辺の道路が狭く、「道路が渋滞するんじゃないかと心配です」と不安もありながら、初めての形式のイベントにわくわくしている。
本堂と旧御堂の大きなスペースを使うので十分な余裕があり、「子どもさんを連れて一日ゆっくりしてもらえる空間にしようと思っています」と話している。
また、旧御堂は改築の予定があり、今の建物は間もなく取り壊される見込みだ。旧御堂は1879年(明治13)の三条大火で本堂が焼失したのに伴って、仮の本堂として建設された。その旧御堂を見学する機会にもなる。旧御堂には1821年(文政4)に記された三条別院総絵図、1828年(文政11)の三条地震で焼失して1842年(天保13)に再建された本堂の上棟式の絵図、三条大火後の1906(明治39)に上棟式が行われた本堂の建設中の写真など5点を額に入れて展示、見学してもらう。
当日、三条別院への車の出入り口は、大通りから本寺小路から真っすぐ参道を入ったところを入り口、西側の出入り口を出口とする。境内は約50台の駐車スペースがあるが、満車の場合は近隣の有料駐車場を利用し、公共交通機関を利用を呼びかけている。出店内容は次の通り。
■いろいろなモノ
■オイシイモノ