片田敏孝教授の講演を聴きたいという念願がようやくかなった。16日行われた三条市地域防災セミナー。三条市防災対策総合アドバイザーの群馬大学大学院・片田敏孝教授が1時間半あまりにわたって講演した。
昨年の東日本大震災からまだ1カ月たたないころ、動画ニュースサイト「ビデオニュース・ドットコム」のゲストで片田教授で出演した。大震災前か次の津波被害に備えて現地に入り、防災教育に向き合っている人がいたことに驚いた。
正直言うと実はそのとき、動画で見る片田教授が三条市防災対策総合アドバイザーの片田教授とは結びついていなかった。片田教授は平成22年度から三条市防災対策総合アドバイザーに就き、すでに1年もたっていた。世の中には偉い先生がいるもんだと関心しながら動画を見ていたという、我ながら何とものんきなものだ。
間もなく片田教授が三条市防災対策総合アドバイザーと結びついたが、そのときは声を上げるほど驚いた。とんでもない先生にアドバイザーになってもらっていたんだと。震災前に片田教授に白羽の矢を立てていたことがすばらしい。以来、いつかじかに講演を聴きたいと思っていた願いが1年あまりたってようやくかなったというわけだ。
「ビデオニュース・ドットコム」に出演したころに比べて、被害状況の把握や検証、分析が進んでいた。各地で同様の講演に引っ張りだこなのだろう。時間を惜しむように立て板に水で一気に話し、濃厚な内容だった。講演の柱である防災教育が最後は地域の文化や人づくりへと行き着く論理は、現場を経験してきたからこそのすごみすら感じさせた。
講演を聴いた国定勇人三条市長はブログ「三条市長日記」で翌17日、「防災文化都市・三条を目指せっ!!!」を書いた。「“三条市は防災文化都市を目指しますっ!!!”という意気込みだけ、片田先生にお伝えしたい」と。「防災文化都市」と言われても何のことやらちんぷんかんぷんだろうが、片田教授の講演を聴いた人は合点が行くはずだ。
国定市長がブログで書いたように、片田教授がは学校管理下になかった5人の子どもが犠牲になったため、「釜石の奇跡」と称されることに違和感を感じる。とはいえ片田教授のおかげでそれよりもはるかに多くの命が救われた。講演のなかでは田舎で暮らす母の話題も。片田教授はこれ以上ないほどの親孝行ができたんだなと、つくづくうらやましかった。