黒染め一筋50年の株式会社テーエム(渡辺竜海社長・三条市金子新田)は、三条市売れるものづくり・しくみづくり支援事業の補助金を受けて新たにステンレスの黒染めの技術を確立。6月から本格受注を開始したが、地元でステンレスの黒染め手掛けるのは珍しく、注目を集めている。
黒染めは金属の表面処理技術のひとつで、黒色の四三酸化鉄皮膜をつくり、防錆力や美観を向上させる。平たく言うと黒さびを施すことで、金属を腐食する赤さびの発生を防ぐ。重厚感のある黒さで、スパナなど作業工具に施されているの見ている人も多いはずだ。
言葉通り表面から中へ浸透する形で染まるため、塗装やメッキのようにはがれることがなく、寸法、肉厚が変わらない。口に入れても害がないのも特徴だ。
鉄の表面処理技術のひとつとして、いわば枯れた技術だが、同社によるとステンレスの黒染めを手掛ける企業は県央地域にはなく、県内でも存在するかどうかというほど珍しいという。
取引先からステンレスの黒染めが可能かという問い合わせが届くようになり、需要があるならとチャレンジしてみることにした。昨年度、三条市売れるものづくり・しくみづくり支援事業で60万円の補助金を受け、ステンレスの黒染め技術を確立した。
試しに黒染めしたステンレスの灰皿、おろし金、ざる、洋食器などは、見た目は黒くなっただけなのに、不思議な印象。視覚的に重そうに見えるが、当たり前だが重さは変わらず、手にすると軽さを意外に感じる。
黒染め施す工程は鉄と同じだが、鉄は黒染めに使う薬品をつぎ足しできるが、ステンレスは使い捨てになることもあり、費用は鉄の場合の7、8割増しになる。
ことし3月に三条市売れるものづくり・しくみづくり支援事業の事業成果報告会で、同席した企業からさっそく問い合わせがあった。6月に受注開始して以降も次々と問い合わせが。渡辺竜海社長(34)は同社の3代目で5人の従業員と一緒に工場で汗を流す。「お客さまからステンレスの黒染めをできないかという問いあわせをいただいたおかげです。それがなければまだやってなかったかも」と渡辺社長はアイデアをくれた顧客の声に感謝する。
「自分から発信する技術をつくりたかった」、「展示会などで県外へも打って出て県央地域に呼び込むことができたら」とも。ステンレスの黒染めで売り上げは前年比2割増を目指しており「今の反響を見ると決して不可能ではないのかと思っています。お手伝いできる幅は広いので、気軽に問い合わせてほしいですね」と話している。