日本対スペイン。三条市のロンドン五輪男子サッカーのパブリックビューイング会場で思い出していたのは、1999年のFIFAワールドユース選手権だった。FIFA主催の20歳以下の世界選手権。日本代表は小野伸二、本山雅志、高原直泰、遠藤保仁らゴールデンエージが名を連ねた。その決勝の対戦相手がスペインだった。
準決勝のウルグアイ戦の終盤、小野伸二は確かフリースローが遅延行為ととられたんだったと思うが、イエローカードを受けて累積で決勝を欠場。司令塔であり、精神的支柱でもあった小野伸二を欠いた日本は、スペインの敵ではなかった。今もスペイン代表のカシージャスやシャビを擁するスペインは4-0と日本を圧倒。サッカー的に言えば日本は“ちんちん”にやられた。せめて小野伸二が出場していたらと、準決勝の笛を吹いた審判をうらんだものだ。
五輪サッカーもオーバーエージを除くと23歳以下の若いチームのこともあり、今回のスペイン戦は勝手に1999FIFAワールドユース選手権の雪辱戦と位置づけていた。
戦評にもあったようにスペインのできが悪かったということもあるのだろうが、日本はスペインと互角に渡り合った。それどころか再三、決定機をはずし、もう2、3点、追加点をあげてもおかしくない内容だった。今回の大金星で96年のアトランタ五輪で日本がブラジルをくだした「マイアミの奇跡」が引き合いにだされるが、「マイアミの奇跡」での日本は防戦一方。ゲームはブラジルが完全に支配し、日本の勝利は「奇跡」と形容するほかなかった。
今回も戦前の予想や実力差からすれば、五輪で日本がスペインに勝つとするなら、それは「奇跡」と称されるほどまれなことと思われたが、ゲームを振り返ってみれば奇跡でもなんでもなく、勝つべくして勝った。
スペイン、とりわけFCバルセロナのサッカーが好きだ。華麗なパス回しからの攻撃が世界中のサッカーファンを魅了する。その下の世代に当たるスペインの五輪代表も同じようなスタイルを標榜しているのだろう。高いレベルのプレーがあってこそ成立するスタイルで、今のスペイン五輪代表ではパスサッカーは必ずしも最善のスタイルではないのかもしれない。そんなことも感じさせた。
いずれにしろサッカー好きにとって、パブリックビューイングの取材はつらすぎる。決定的なシーンに一喜一憂するファンを撮ろうとそのたびにレンズを客席に向ける。肝心な場面をリアルタイムで見られない。これはストレスがたまる。次は客席側にいることを願わずにはいられないのだが…。
予選の残り2戦、29日のモロッコ戦、8月1日のホンジュラス戦はいずれも25時キックオフなので、さすがに三条市はパブリックビューイングを見送る考えだが、日本がD組1位通過なら準々決勝は8月4日午後8時キックオフ。2位通過ならやはり25時。国定勇人市長は、決勝トーナメント出場なら再びパブリックビューイングの実施を検討すると話したが、この日は三条夏まつりの花火大会にぶつかっているのが悩ましい。
市外からパブリックビューイングに訪れた人は、「すばらしい雰囲気ですね」と声を上ずらせて話し、会場の熱気や一体感に感激していた。勝ったからではなく、試合の最中から喜んでいた。難しい判断だがパブリックビューイングの有無にかかわらず、サッカーを観戦したい市民は花火を見に行かずにテレビの前にかじりつくはずだ。それなら各家庭のテレビではなく、再びみんなで心をひとつにして応援する場をつくりましょう、というのは理にかなっていると思う。