燕市は7月29日、福島県から市内に避難している人を対象に福島県南相馬市などで行われた国指定重要無形民俗文化財「相馬野馬追(のまおい)」に無料招待する相馬野馬追観覧ツアーを行い、12人が参加した。そのようすを燕市から写真などを提供してもらい、以下にまとめた。
午前4時半に燕庁舎を出発し、9時に南相馬市に到着。原町区の市内を行く騎馬武者行列、原町区の雲雀ケ原祭場で甲冑競馬と神旗争奪戦を見学したあと、仮設の福幸商店街に燕市に避難していた人が出店した居酒屋「絆」を訪問し、午後9時過ぎに燕市に帰着した。
相馬野馬追は、福島県浜通り北部の旧相馬藩領で行われる神事で、国の重要無形民俗文化財。1060年以上前に行われた軍事訓練がその始まりとされる。昨年は東日本大震災の発生に伴って一部の会場が警戒区域となったこともあり、大幅に規模を縮小して行われたが、ことしは7月28、29、30の3日間、ほぼ例年並みの規模で行われた。
参加したのは6家族の12人で、2家族の2人が南相馬市のほかは同市に隣接する浪江町の人。参加者の中には、孫が行列に参加している人がいて、感動の再会をした。
酷暑で観覧するのだけでも疲れたが、参加者は来て良かったと喜んでいた。南相馬市から燕市に開設された避難所に派遣されていた南相馬市職員が会場の救護所で詰めていたので訪問。ゆっくり歓談する時間もなく、体調を崩した人が次々と救護所を訪れた。
居酒屋「絆」は昼食も手配してくれ、同店を訪れると、かつて燕市に避難していて南相馬市に戻った人も何人か集まって出迎えてくれた。
同行した担当者は、騎馬武者行列で集合場所へ向かう騎馬が車道を当たり前のように闊歩している光景に驚いた。行列途中の武者に沿道から観覧者が缶ビールや酒を渡し、騎上で飲み干す豪快さ。400騎の大行列が延々と続くスケールの大きさや迫力に圧倒されたが、東日本大震災以前は500騎以上にのぼったという。
南相馬市へ向かう途中の飯舘村は、車は通れるが、人は住んでいないという光景に愕然とした。復興に向けて多くの障害があるとは思うが、地域が力を結集し一丸となって伝統行事を成功させようという姿に感動したと話していた。