三条市では、市内で創業を目指す人を対象に新規開業に必要な経営の知識とノウハウを体系的に学んでもらおうと7日から9月30日まで5回コースの「創業塾ポンテキア」がスタート。受講者は34人にものぼり、中心市街地への出店意欲の高まりを感じさせた。
メーンの講師は中小企業診断士だが、目玉のひとつが先輩出店者にも講師を依頼したこと。初日は午後7時から三条東公民館で開き、三条市の空き店舗対策事業補助金を利用して2010年4月にオープンした手芸用品と雑貨の店「BonBon」=三条市旭町1=の代表富川幸恵さんと企画の加藤はと子さんが講師を務めた。
加藤さんは8年間、フランス輸入子ども服の「POUPONS(プポン)」=同市東裏館2=でも企画を担当し、ネット販売も取り組んできた。得意ではない小物ができる人材をネットで探し、長岡市に住む富川さんと知り合った。3年前に一緒にパリへ出掛け、手芸の文化が根付いていることに感動し、「完全にノリ」で「何もわからず、いいイメージだけで始めました」と、共同経営で出店に至った経緯を話した。
加藤さんは「2人が始めたのが心強かった」、「性格が違う、視点がまったく違う」のが奏功し、さらに雇った従業員と「3つの頭で何とか乗り切ってきた」と言い、創業のポイントとして商品構成、開店時期、金、人とのつながりについてそれぞれ説明した。
顧客のイメージを細部まで具体的に設定。あまり和風にしないようにした。最初の1年は追われるように過ぎ、2年目はワークショップを始めることができ、3年目でようやく売り上げを意識するようになった。向かいの店の周年祭でPRしてもらおうとその日にオープンを合わせた。価格設定は今も悩み続けており、知り合いの店舗と、もう3割、売り値を上げられれば楽になると話したと言う。
富川さんは、勢いを中心にやってきたが「ようやく立ち止まって考えられる時期になった」と言い、今は売り場面積を減らして在庫を減らし、滞在型の店舗づくりを考えていると話した。
加藤さんはオリジナルの手芸キットの展開に力を入れ、小売でありながらメーカーであるというスタイルにこだわる。そして3年目を契機に法人化することにもふれた。
「BonBon」に刺激を受け、あこがれて市内に出店した店舗も多い。加藤さんは一昨年秋にスタートした三条マルシェの実行委員会でもリーダー的役割を担い、今の三条市を代表する旬な女性のひとりで、「BonBon」は今の三条市の市街地活性化を象徴する時代の申し子とも言える存在だ。
受講者の内訳は男12人、女22人で、居住地域は市内27人、市外7人。また、開業を予定している職種は小売11、飲食11、サービス7、製造3、その他2。平均年齢は39歳で「BonBon」のふたりと同じ世代のこともあり、「BonBon」はまだ想定した利益には届いていないと言うが、その成功に学び、ヒントを得ようと真剣に聞き入っていた。
受講者のひとり、豆腐製造業佐久間食品(株)=三条市東本成寺=で製造広報担当に就く佐久間康之さん(29)=三条市東新保=は、「直売所かカフェとのコラボで出店を考えています」と言う。三条マルシェにも出店しており、「豆乳たまごプリン」、「おとうふパフェ」、「豆乳ブラマンジェ」など豆腐を使ったスイーツの開発やヘルシー志向の新し豆腐の食べ方の創造に積極的だ。
現在は卸だけで直売は行っていないが、店舗では自社製品のPRだけでなく直接、利益の出る経営を目指す。「情熱をもち、現実を見ることなど、ためになる話がたくさん聞けました」と話していた。