ロンドン五輪の男子サッカー3位決定戦。サッカーで、ここまでガチンコな3位決定戦を見られるのは、珍しかった。各国のふだんのリーグ戦は優勝にこそ意味があり、それ以外に大した意味はない。W杯も顕著で、優勝にからんでくるようなチームは、優勝以外にはほとんど価値を見いだしていない。優勝をかけたオール・オア・ナッシングだ。したがって優勝の可能性が消えた3位決定戦は、消化試合のようなしょっぱい試合になり、それまでの控え選手をスタメンにそろえるなんてこともある。
しかし、今回の3位決定戦はちょっと違った。そもそも日本は一般の強豪国と比べると、3位にもそれなりの価値を置く。一方の韓国。ほかの国には負けても日本にだけは負けたくないというメンタリティがある。おまけに、今回も韓国は金で買うことのできない2年間の“兵役免除”というインセンティブ、口悪く言えば“えさ”を用意した。韓国はモチベーションが上がらないわけがない。やはりモチベーションの高さが違ったのだろうか。韓国の個人の能力の高さも特筆すべきだが、準決勝のメキシコ戦に続いて日本は韓国にも力負けした印象だ。
サッカーと別のことでもうひとつ、ひっかかることがあった。夜の日韓戦を前にして10日、李明博韓国大統領が竹島を訪問したことだ。「電撃訪問」とも報じられる突然の訪問だった。日韓戦を前に何とも挑発的な行動と思った。韓国内は3位決定戦での日本必勝に燃えていたはずだ。そのなかでの李明博大統領の竹島訪問は、韓国世論を自信の政治的求心力に利用しているように思えてならない。仮にそうであるなら、結果的に日本が負けたことでますますその狙いがはまったと言えるだろう。
話をサッカーに戻すと、メキシコ戦といい韓国戦といい、力負けしたという印象だ。1対1の局面で負け、決定力不足。ある意味、日本のお家芸?とも言えるウイークポイントだ。体格的にもメキシコは欧米と比べれば小柄で、同じアジアの韓国はなおさらで、身体能力の違いを体格のせいにはできない。
しかし、悲観することはない。それでいてベスト4進出だ。これらの弱点を克服すれば、十分に優勝をねらえる位置にいることになる。日本のU23の世界ランキングは15位くらいだったと思う。その実力からすれば、ベスト4は胸を張る資格のある成績だ。出場は少なかったが、三条市出身の酒井高徳選手も勝利に貢献した。三条市に凱旋する機会があったら市民をあげて活躍を祝福したい。