東日本大震災で津波に見舞われた被災地、岩手県大船渡市の社会福祉法人「典人会」(柏貴美理事長)の職員が劇団員を務める「気仙ボケ一座」の公演会が9月30日、燕市吉田産業会館で開かれ、実に800人もが来場する大入りで笑いもいっぱいの公演だった。
「気仙ボケ一座」は認知症への理解をテーマに1995年に旗揚げした劇団。認知症の問題を寸劇にして全国各地、さらに海外での公演もあり、今回が233回目の公演となった。
公演会は、燕市内にある「桜井の里福祉会」、「つばめ福祉会」、「吉田福祉会」の3つの社会福祉法人が主催。大船渡市の典人会は東日本大震災直後、施設で定員の何倍ものお年寄りを受け入れた。典人会のトップと桜井の里福祉会の事務局長が交流があったことから、桜井の里福祉会は昨年4月から6月まで数回にわたり延べ30人近い職員を典人会の施設へ派遣したことから、典人会がその礼にと公演が実現した。
訪れた団員は8人。ステージには家の居間の書き割りが設置され、主に夫婦と認知症が始まったおばあさんの3人のやり取りで、実際にあったことも素材にしたコント風に披露した。
物忘れとぼけの違い、うんちや徘徊(はいかい)の問題などを取り上げ、それぞれ家族の対応の良い例と悪い例を示し、正しい対応のアドバイスも行い、来場者に質問することも。なくしたものを「しまい忘れた」と言い、探し物を見つけてあげると「盗んだ」と言われるケースでは、「一緒に探しておばあちゃんに見つけさせてあげましょう」とアドバイスした。
「年寄りにも役割をもってもらいましょう」、食事を忘れるときは「食べていない言う、おばあさんの世界に合わせてあげましょう」と、家族の認知症に悩んでいる人には、なるほどとひざを打つような発想の転換がたくさんあった。
来場したのは、主催団体の施設利用者やその家族や福祉関係者。ユーモラスな演技に笑いながら時間を忘れて楽しく認知症の対応のヒントを得ていた。