全国で初めて住民投票で「原発建設NO!」を選択した旧巻町(今の新潟市西蒲区の一部)を舞台に原発推進派も反対派も全員が投票した住民投票が実現するに至ったドラマを描く劇映画『渡されたバトン〜さよなら原発〜(仮題)』の制作に伴って、このほど燕市でも地元キャストのオーディションが行われた。
作品には約40人のキャストが必要になるほか、集会や投の票シーンにはエキストラも必要になる。キャストオーディションは9月29日に燕市勤労者総合福祉センター、30日に新潟市・クロスパルにいがたの2会場で行われた。燕会場には約30人が参加し、桑山和之アソシエイト・プロデューサーらがオーディションした。
日本国憲法誕生の真相に迫った「日本の青空」(07年制作)、豪雪・貧困・多病と戦った岩手県沢内村を描いた「いのちの山河」(09年制作)に続く「日本の青空」シリーズ第3弾。脚本はジェームス三木、監督は池田博穂、出演者は赤塚真人、宍戸開、青木英美、ケーシー・高峰ほか。
製作は「日本の青空III」製作委員会で、独立プロダクションの有限会社インディーズ=小室皓充代表取締役・東京都中央区湊3=が配給。制作費は1億3,000万円で10月下旬から11月下旬まで撮影を行って2013年1月末に完成、3月公開のスケジュールで、全国1,000カ所以上の上映会を予定している。
映画では、原発推進派の拠点になったという設定の地元の架空の割烹旅館「珊瑚家」を舞台に、「珊瑚家」を経営する家族が推進派と反対派で対立しながらもしだいに全員が反対派にまとまっていく。一方で住民は推進派と反対派に分断されながらも、最後は住民投票で反対派が勝利するドラマを描く。
東日本大震災発生以前から3作目は原発を扱う企画だった。地元住民には当時のしこりを今も引きずっている。桑山アソシエイト・プロデューサーは、企画を進める段階で「寝た子を起こすなとか、いろんな声がありました」と打ち明ける。
映画は反原発の立場を鮮明にしているが、「これから原発がどうなっていくかわかりませんが、無くなっていくという方向に変わりはないでしょう」、当時の住民投票の決定が「誇れる形にしたい」と言う。
反原発というだけでこの作品を見ない人もいると思われるが、「原発の安全性に疑問をもたない人はいないでしょう」。「より安全な対策を求めるのは賛成派も一緒で、すべての人たちから映画を通して原発の問題を見詰めてほしい」と期待している。