19日から22日までの4日間、燕市吉田産業会館で開かれている第7回燕市美術展覧会の授賞式が21日、同会館で行われ、奨励賞以上を受賞した31人に賞状や記念品、副賞が贈られた。
5部門の最高賞1点ずつの市展賞は、5人のうち本人が出席したのは3人。市展賞には今回初めて記念のトロフィーが贈られた。トロフィーは地元の金工作家、渡辺和也さん(33)=燕市八王寺=が銅で制作したもの。鈴木力市長から受賞者一人ひとりに賞状などを手渡した。
今回の受賞者で注目は、工芸・彫刻部門で市展賞を受賞した新潟県燕中等教育学校6年生石田光平さん(18)=田上町田上乙=だ。陶芸作品「GUGEN(具現)」を初出品し、いきなり市展賞に輝いた。高校だと3年生に当たり、燕市展で高校生が市展賞を受賞したのは初めて。ただ、来春、卒業すると燕市在学ではなくなるので、これが最初で最後の燕市展出品となりそうだ。
陶芸には窯(かま)が必要なので、誰もが気軽に手を出せるものではない。石田さんは土生田焼(はにゅうだやき)を手掛ける陶芸家、石田一平さん(57)の次男で、3人きょうだいの末っ子。今回の作品は「父親に作ってみろと言われて」制作。「曲線を意識してエッジを立たせて。ろくろはだいぶ難しかったです」と作風を語る言葉がすでに“作家”の風格させ漂わせる一方、「母親にお父さんと似てるの作るねと言われました」と苦笑いする。
「いつから始めたという自覚がない」と言うほど、子どものころから父の背中を見て、「父が仕事してるのを邪魔して」見よう見まねで土をいじっていた。しかし、これまで作品を発表することはなかった。
学校の美術部にも入っていない。主な賞と言えば、小学校4年生だった04年に当時の日本郵政公社が主催した第30回「私のアイデア貯金箱」コンクールの三条地区審査で入賞したくらい。学校では美術作品の提出を求められることがあるので、「半強制的に作ったことはありますが、能動的に作ったのは今回が初めて」。
受賞作は「自分の120%の力で作ったつもりでしたが、70%くらいの感じの仕上がりでした」と、満足にはほど遠い。市展賞を受けたことには「本当にうれしい限りです」と素直に喜ぶ。
父には市展賞受賞を「まぐれだね」と言われたが、父が市展の審査結果を掲載した新聞を2部、コンビニ店に買いに行ったことをうれしそうに話す。父から目の前で評価されたり、うまいと言われたことは一度もないが、「ぼくは、ほめられて伸ばされたい」と、またにっこり。
美術大学へ進学するかどうかは決めていないが、「ものを作っていきたい」とすでに将来を決めている。しかし「環境が整っていたので土でやらせてもらいましたが、陶芸にこだわらずいろいろな素材を勉強していきたい」と、陶芸は目的ではなく、表現の手段のひとつととらえる明確な意識がある。今は県展など次の公募展を目指すといった具体的な目標を定めるのではなく、「どんどん上を目指していきたい」と話す頼もしい18歳だ。ちなみに副賞2万円は「とりあえず貯金します」。