三条市下田地区の特産にと期待されるサルナシの果実「コクワ」が収穫期を迎え、コクワをカレーやソースに加工、販売している(有)藤兵衛工房=山田宏高社長・三条市笹岡=では年に1度の一次加工の作業を行っている。
コクワを実らせるサルナシは、マタタビ科マタタビ属のつる性植物。晩秋の山奥でしか味わえない野趣あふれる果実で、キウイの原種ともいわれる。収穫期は10月初めころから約1カ月間。果実は緑で縦3、4センチのカプセルのような形で、キウイフルーツの毛を無くして小さくしたよう。完熟すると糖度が25度にも達し、甘酸っぱい味はキウイそのものだ。
下田地区にある10軒のコクワ生産者は、10月に入って次々と収穫作業を行っているが、生食は期間が限られるため、同社で通年利用可能なペースト状に加工する。さらに二次加工してコクワのレトルトカレーやソース、酢などに商品化して販売している。
収穫したコクワは、追熟させてから一次加工する。同社の加工場では連日、小さな実の1つずつのへたや汚れをとるていねいな手作業のあと、ペースト状に加工する。そのペーストを使って二次加工した商品はカレー1種類、ソース2種類、酢1種類の4種類をラインナップするほか、スノーピークとのコラボ商品のバーベキューソースもある。コクワを使ったジュースやジャムは他産地でも見られるが、カレーやソースは珍しい。
これらの商品は、同社加工場に隣接する農家カフェ「こくわ屋藤兵衛」をはじめ、地元下田地区の嵐渓荘と横田精肉店、市内の公楽、燕三条駅観光物産センター「Wing」などで扱っている。
また、「こくわ屋 藤兵衛」=山田香織店長=では、食事メニューのすべてにコクワペーストやソースを使っており、コクワのソースをドレッシング的にした下田産の野菜や麩の料理をワンプレート「菜食ランチ」(600円)や生姜焼きランチ、カレーなどがある。
コクワに限らず食材のほとんどが下田地区で生産されたもので、ウワズミザクラの実を使った「杏仁子(あんにんご)のプリン」、ブルーベリーの原種という「あたんざきのチーズケーキ」など、デザートでも下田の山の恵みを紹介している。
コクワの一次加工を行っているこの時期に限り、生の果実を見ることができるかもしれない。「こくわ屋 藤兵衛」は、国道289号を山手へ向かって長沢郵便局の先約200メールの右側に看板がある。午前11時から午後4時まで営業、定休日は水曜と木曜。電話は「0256-46-4931」。