三条市立大島中学校(杉山敏校長・生徒64人)で8日、大島中学校同窓会(堀信孝会長)主催の「茂木健一郎先生の寺小屋授業@三条・大島中学校」が開かれた。同校生徒のほか、同校学区内の大島小と須頃小の5、6年生、保護者や地域の約120人も出席し、脳科学者茂木健一郎さんとの対話形式でコミュニケーションを楽しみながら刺激を受けた。
茂木さんは体育館のフロアに設けたステージに立ち、出席者は茂木さんを囲むように座って進行した。茂木さんは黒いジャケットにチノパン、トレードマークともいえるもじゃもじゃ頭。62年生まれの50歳で、生徒の親の世代はバブル景気で「一度はジュリアナ東京に行ってみたかった」と、児童生徒の頭に「?」が浮かぶような話から始めた。
そんな日本が調子良かった時代に活躍した人として、田中角栄の物まねをして笑わせた。バブル崩壊後の失われた10年、20年を過ごしてきた子どもたちに「かわいそうにな〜。あしたが良くなるって感じがしないもの」と同情しつつ、だからこそ、この日のテーマが「挑戦」であるとつなげた。
自身の体験から、初めて三重跳びができたときの気持ちは今も忘れられず、「そのときに脳の中にドーパミンという物質が出て脳の回路を強化する」。「すでにできることをやっていてもしようがないということ。ここにポイントがある」、「本当は一人ひとりはかけがえのない個性がある。それを伸ばしていけばいい」、「できないことに挑戦するってことさえ忘れなければ絶対に人生は君たちを裏切らない」と、すべての子どもたちに当てはめることができる言葉を伝えた。
そして子どもたちに問いかけた。事前に生徒がそれぞれ悩みを書いておいた紙を示し、順に子どもをステージに上げて話を聞いた。茂木さんの子どもたちに対する二人称は「お前」。友だち感覚で「そんなことでいいと思ってんのか!」、「反省しろ!」、「勉強って難しいか?」と、親しみを込めて笑いもいっぱいに友だちのように語りかけた。
そんななかでも、集中力がないという生徒に茂木さんは、家族のいる居間で勉強している人の方が成績がいい場合があり、「ノイズが入っても遮断して集中することで前頭葉が鍛えられる」、「瞬間的にトップスピードにもっていけ」、「不安や無力感といったネガティブな感情にも意味がある」と、日常に生かせる新しい視点を与えてくれた。
これからの社会は喜怒哀楽が大切で、「挑戦は必ずしも成功に終わらないかもしれない。勝つことだけじゃなく、負けることも多いが、自分の気持ちを大切にしてほしい」と挑戦するこころ持ち続けるよう求め、高校受験を控えた3年生には「あと4カ月、意外に大事だよ」と時間を無駄にしないよう求めた。
ステージに立って茂木さんとやり取りした同校生徒会「緑風会」会長の3年生鈴木祥太君は「想像していた以上に楽しかった。これからの学校生活に役立てられそうなことがたくさんありました」と話していた。
同校同窓会では以前から講演の計画があり、たまたま縁があって茂木さんに講師を引き受けてもらうことができた。というのも、学区内には30人の中学校1年生がいるが、同校への入学は13人にとどまった。三条市内の中学校でも生徒数は最も少ない。同校に対する地域の理解を深めてもらおうというねらいもあった。