NPO法人信濃川大河津資料館友の会(早川典生理事長)は11日、燕市分水公民館で初めての「大河津分水講演会2012」を開き、東京大学生産技術研究所の沖大幹(おき・たいかん)教授による「水危機 ほんとうの話」がテーマの講演に約230人が来場した。
沖教授は日本の水研究の第一人者で、講演では洪水にしぼって話した。世界で発生する自然災害被害といったマクロな視点から国内の被害、平成23年7月新潟・福島豪雨、2008年夏の水難事故、昨年のタイ洪水などと話を進めた。
平成23年7月新潟・福島豪雨では、三条市の荒町での水位と笠堀の雨量のグラフや笠堀ダムの流入量、放水量、貯水量のグラフを示して、豪雨とその影響の推移、ダムの操作などを解説。専門家でなければ目にしないようなデータやグラフを使った難解な部分もあった。
ただ、洪水の被害が想像以上に多いことについて「なぜ水害は怖いか。水害は逃げないのが問題」と危機意識が低いことを指摘。「逃げ遅れたために死んじゃった人の話は絶対、聞けない」と、生き残った人の話しか聞けないことにも注意をうながした。
タイ洪水で804企業が浸水被害を受けたことが世界の経済に影響を与えたように、グローバル化した現在は「領土」を超えて世界に広がる「国土」が日本を支えている。温暖化もあって想定外の超過洪水はいつでも起きることを話し、対策は「地道にバランスを保ちながら被害リスクを減らすこと」とした。
講演後の質疑応答で来場者は、大河津分水の旧可動堰(ぜき)を残したままで問題はないのか、サクラは堤防を弱くするのでなるべく川から離した方がいいのではないか、大河津分水公園は急な増水による危険性はないのかなど、地元の大河津分水に関して質問していた。
同友の会は昨年11月にNPO法人化したのを機に、活動の範囲を広く地域に求め、大河津分水の恩恵を受けている新潟、長岡、三条、燕の各市を会場に年1回、持ち回りで大河津分水講演会を開くことにし、今回がその第1回だった。