書家の三条市直江町3、坂田鵬遊(本名・和子)さん(53)が主宰する鵬遊書道教室は、30日まで三条市大野畑、済生会三条病院(郷秀人院長)で初めての教室の作品展「はじめの一歩 習作展」を開いており、教室に通う子どもたちの作品を展示している。
展示作品は教室の生徒のうち子どもたちの作品。小学校高学年を中心に小学校1年生から高校生まで30人余りの子どものうち、27人が1人1点ずつ書いた作品など30点を展示している。
「自分の字を好きになるのがいちばんいい」、「それなりに、自分なりに書けることが大切。上手、下手はその次のこと。学年が上がれば自然に上手になる」と話す坂田さんの言葉通り、子どもたちは半紙に自分の書きたい字を書きたいように書いている。
軸にした半紙には、「元気百倍」、「スカイツリー」、歌で聞いたような「百%勇気」、そして三条市出身の漢学者諸橋轍次博士の座右の銘「行不由徑」も。言葉にするのは難しいが、力強くのびのびとした筆致が印象的な作品ばかりで、百聞は一見にしかず。子どもたちが楽しんで半紙に向かい、気持ち良く筆を運んでいる姿が目に浮かんでくるような作品ばかりだ。
書をさらに引き立てて見せてくれているのが、落款(らっかん)。消しゴムで子どもたちが自分で作ったもので、多くは自分の名前から取った1文字を彫った。
90×180センチの横額2点に宮沢賢治の「雨ニモマケズ」を書き連ねた大作がおもしろい。ひと目見て書がばらばらなことに気付く。実は1行ごとに違う子どもが書いたユニークな合作だ。とはいえ、自分の行を書くときには前の行を意識しながら書いたはずで、個性と協調性や統一感が入り交じり、最後は坂田さんの書で結んでいる。坂田さんは武者小路実篤の詩「桃栗三年柿八年 達磨は九年 俺は一生」を書いて展示している。
坂田さんは大東文化大学文学部日本文学科で書を学び、毎日書道展秀作賞2回をはじめ中央の創玄書道展で秀作賞1回、さらに県展入選8回、長岡市展と三条市展で奨励賞も受けている。三条市本町3で書道教室を始めてからことしで17年目になり、五十嵐川改修工事に伴って今の場所に移転してことしで7年目になる。
済生会病院には大病で半年間、入院した経験があり、退院してからことしでちょうど20年になった。これまで生徒の作品を発表したことはなかったが、「そろそろいいかな」と20年前に入院した病院で初めて作品展を開くことに。ことしは子どもの作品、来年はおとなの作品と2年シリーズの企画に決まった。
自身も入院した経験から「病院にいらっしゃる皆さんは落ち込み勝ちなので、できるだけ明るくなれる言葉を選び、元気な書を書いてもらいました」と坂田さんは言う。
「書道」だが、「書」はさまざまな「道」に通じると坂田さんは考える。「全員が書道の先生になるわけではありませんから。書道を方法として、そこから、こういう道へ進みたいとか、自分のできることをひとつでもふたつでも見つけてもらえればいいと思ってます」。
「人とのつながりで回り回ってお金がついてくる。人のために、思いやりをもつことができきれば」と書道への向き合い方に生き方や社会のあり方も投影している。教室は直江町教室のほかに吉田教室も開いており、絵手紙教室も月1回開いている。問い合わせは同教室(電話:0256-34-5894)へ。