第4回諸橋轍次博士記念漢詩大会にあわせて17日午後3時から三条市・諸橋轍次記念館で記念講演会が開かれ、テレビでもおなじみの孔子第75代直系子孫当主で作家の孔健(コウ・ケン)さんの講演を約130人が聴き入った。
孔さんはチャイニーズドラゴン新聞編集主幹、中国画報協会常務副会長、中国亜州太平洋経済交流協会副会長などに就く一方、テレビ朝日の『朝まで生テレビ』や『ビートたけしのTVタックル』など報道系番組の出演も多い。
講演のテーマは「諸橋轍次博士との交流に見る『孔子廟(こうしびょう)と衍聖公(えんせいこう)』」。孔子廟は、孔子をまつっている霊廟のこと。「衍聖公」は封爵名で、孔子の嫡流の子孫が世襲している。
黒いチャイナ服を着た孔さんは「皆さん、ニーハオ」と始めた。最近も日中問題で『ビートたけしのTVタックル』に出演しており、今の日中関係は「大変、残念」。日本は衆議院が解散、中国は習近平総書記を新しい指導部となり、日中間の自由貿易協定の会談が始まり、日中関係は「穏やかに緩和になるだろう」と期待を込めて見通しを話した。
「燕三条のところで諸橋先生のふるさとということを十何年か前にわかりました。すごくわたしは感心しているんですよ」と言い、『如是我聞 孔子伝』の上下巻も出版した諸橋博士は、孔子研究、漢学、孔子学の大先生として偉大な実績があり、「中国人も心から尊敬している」、諸橋博士が編さんした『大漢和辞典』は「中国人でもここまでできない」。
中国の詩経を孔子が編集した。詩にはルールがある。七絶は4行、七律は8行。中国の反日の暴徒化は「ルール違反、礼儀を知らない」。“詩礼銀杏”という言葉がある。孔子の庭にギンナンの木の所で子どもたちにまず詩、次に礼を教えた。「ここまで日本人でこういう詩をつくるとは、わたしどもは夢にも思わなかった」、同記念館で漢詩大会までできることに「中国にとっては正直、恥ずかしい」。今の中国の子どもたちは詩を暗唱しない。
“熟読唐詩三百首”という言葉がある。唐の時代の詩を三百くらいは熟読、熟読というよりも暗唱できれば、作詞ができなくてもそれなりの流れが出る。「詩は人間の知恵の結晶と思ってください」。
孔さんは、雑学、トリビア風なネタも話した。“仁者寿(じんじゃ、いのちながし)”で、僧や哲学者は長生きする。孔子が死んだ73歳、孟子が死んだ84歳、そして95歳と「この3つの坂を越えたら100歳まで行ける」。
孔子の子孫は今は40戸あり、60年に1回、家系図を更新して子々孫々に伝えている。孔健さんは75代だが、名前は生まれる前から110代まですでに決まっていて、111代で再び初代に戻る。
中国は大陸で狩猟民族、自然と戦う。日本は島国で農耕民族、自然から守る。中国は商人、日本は職人で、諸橋博士はある意味、「漢字の職人」。
福田元首相が日中の問題はお互いが論語を学べば、孔子に学べば絶対に問題を解決できると言った。論語は前から読んでも、途中から読んでも、後ろから読んでも、どこから読んでもいい。
「最初のツイッターは論語」。“子曰(しのたまわく)”で始まる言葉と解説を合わせて大体140文字になり、「こんなにエキスというか、小さな言葉でまとまるのないでしょ」。
中国は土の国家。そこには水がなければならず、中国のナンバーワンは名前に“水”が入らなければならない。毛沢東は“沢”にさんずいの水が入っている。同様に華国鋒(×)、トウ小平(○)、胡耀邦(×)、趙紫陽(×)、江沢民(○)、胡錦濤(○)。トウ小平は水がないようだが“平”の字に“瓶”を充てることがあるので、水がある。そして新たなトップとなった習金平も同様に“平”の字があるので長続きするというユニークな予測を披露した。
来場者は地元の諸橋博士のファンや漢詩愛好者のほか、翌18日に開かれる漢詩大会に出席しようと県外からの約20人も。テレビで見る通りの温和な笑顔で、大きな抑揚や間で熱く語る孔さんに引きつけられ、聴き入っていた。講演後も孔さんと握手したり、一緒に記念撮影したりと、孔子直系にありがたさとともに感激していた。孔さんも18日の漢詩大会、続く流觴曲水宴( りゅうしょうきょくすいえん)に参加する。