“笛人(ふえびと)”こと燕市のフルート奏者、本宮宏美さん(28)のセカンドアルバム『輝(かがやき)』のリリースを記念した本宮さん初のホールコンサートが22日午後3時半から燕市文化会館で開かれ、新曲を中心にファンや市民へ、そして急逝した父へ届ける。
演奏は最大7人編成で、この日発売のセカンドアルバム『輝』に収録した11曲を中心に、ファーストアルバム『息吹』の収録曲も演奏。バラード、ロックンロール、ブルースなどフルートではあまり聴かれない幅広いジャンルの楽曲をクラシックでは使われないようなフルートの奏法も駆使した本宮さんの豊かな表現力で演奏する。
最後は本宮さんと同じ音楽事務所「オトノハコ」=新潟市西区=に所属するシンガー、小宮陽子さんとタカハシナオトさんがゲスト出演し、2時間余りに及ぶ長丁場となる。
また、コンサートに先だって午後2時から3時15分まで、会場駐車場に立つ登録有形文化財への登録が決まったばかりの「燕市旧浄水場配水塔」の内部を公開し、新曲を塔内で流す。
この配水塔は「水道の塔」と呼ばれて市民に親しまれており、その改修工事完了を記念した式典がことし4月に同所で行われた。あわせて燕市文化会館のロビーで本宮さんの演奏による記念ミニコンサートが開かれた。
そのコンサートのなかで本宮さんは、「12月のセカンドアルバムリリースのときには、ここをいっぱいにすると言っちゃったんです」。水道の塔は本宮さんが暮らす町内に立つ。ミニコンサートの少し前から生まれ育った地にある燕市文化会館でのコンサートが頭にちらついていたが、その場の雰囲気でつい宣言した。「言ってから動くタイプなので」と本宮さん。間もなくその約束を果たす時だ。
コンサートに向けて半年前から準備を続けるなか、予想もしない出来事が本宮さんを襲った。本番まで残り2カ月を切った10月29日、父の博さんが急逝した。59歳の若さだった。2年ほど前に心不全に倒れたが、手術して命を救われた。退院後はそれ以前と変わらない元気と生活を取り戻したが、再び心不全に見舞われて帰らぬ人となった。
父は娘がクラシックの演奏で食べていけるのかと心配していたが、オトノハコに所属し、CDをリリースしたことを心から喜んでいた。自分でCDを買っては配って回り、飲み屋ではいつも最後は演奏活動を続ける娘の自慢話で終わっていたと言う。
一度、倒れてからは「与えられた人生だと言ってました。姉の子どもの孫とわたしのCDを見ることができて、死にそびれて良かったと」と本宮さんは父を思い出す。
棺には今回のコンサートのCD付きチケットを納めた。通夜では献奏としてフルートを吹いた。演奏が終わると僧りょの勧めもあって参列者で拍手し、和やかな温かい式になった。
「父がいちばん見たかったのは、今回のライブ。絶対に会場に来るでしょう。どこかで見ていてくれるはずです」と本宮さんは信じて疑わないが、追悼がすべてではない。
今回のチケットは父の知り合いはもちろん、燕のいろいろな人やファンの人が自主的にPRし、販売してくれた。すでに約500枚ものチケットがさばけた。これまでの歩みを含めて自分の力だけでなく、大勢の人に助けられた。
「何百人の前でも、ひとりの前でもやることは変わりません。1年間、活動してきたなかで得た何かを見せることができれば」と自分自身が納得できるステージを目指す。「これが最後ではなく、次へのいいスタートを切り、これをきっかけに来年以降、わたしの音楽をいろいろな人、世界へと発信していければ」と願っている。
開場は午後2時半でチケットは前売り2,500円、当日3,000円、サイン入りのCD付きスペシャルチケットは前売り4,800円、当日5,300円。いずれも小中高生は1,000円割引き。前売り券は燕市文化会館(電話:0256-63-7002)で扱っている。問い合わせはオトノハコ(電話:025-211-2213、時間外は070-6555-2910)。