今秋からの地元経済の冷え込みで1年8カ月ぶり5回目の燕三条地域景況対策会議、安倍新政権の初仕事、緊急経済対策で10兆円規模の大型補正予算の編成に燕三条地域の要望をアピール (2012.12.27)

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ことし秋から地元経済が冷え込むなか、三条市と燕市は26日、燕三条地場産業振興センターで燕三条地域景況対策会議を開き、照内太郎日本銀行新潟支店長が「最近の金融経済情勢について」をテーマに基調講演、「地域の景況及び今後の対応策について」をテーマに意見交換し、両市長連名で「燕三条地域の今後の産業活性化に関する共同声明」を発表した。

26日開かれた燕三条地域景況対策会議
26日開かれた燕三条地域景況対策会議

昨年4月に開いて以来、1年8カ月ぶり5回目の開催。両市から市長と商工団体代表、連合県央地協、行政・地域経済団体から合わせて27人が出席。開会あいさつで鈴木市長はこの日、安倍新政権が誕生したいろんな意味合いのある日に当たったことにふれた。「秋以降、非常に厳しい状況」との認識を示した。来年3月には金融円滑化法が期限切れになり、先行きが不透明ななか、新政権に対し「どんなことをこの地域として要望、訴えていくかということをお聞かせいただく非常にタイムリーな会議」として活発な意見を求めた。

基調講演で日本銀行新潟支店の照内支店長は、海外経済の動向から話した。海外経済は減速した状態が強まり、米国は緩やかな回復基調、欧州は欧州債務問題の悪影響がギリシャやポルトガルといった周縁国からドイツやフランスのコア国へ波及。中国は成長ペースの減速が長引いている。

GDPはことし秋以降も公共需要は上向きだが、民間の需要は秋ころから勢いを失い、輸出はほぼ一環して下がっている。ことし7月と10月の地域経済の動向は、東北地方が景気が横ばいのほかは、すべての地方で悪化。大都市圏に比べて地方圏の経済が悪化していることをデータで示した。

東日本大震災後の新潟県経済の景気の足取りをグラフ化して示した。震災直後の影響期が11年秋から緩やかな持ち直し局面、そしてことし12年秋から一服・弱含み局面と変化している。さらに新潟県経済の動向を国内需要と海外需要、輸出、生産、企業の景況感を示した。

日本銀行新潟支店の照内支店長による基調講演
日本銀行新潟支店の照内支店長による基調講演

今後の県内経済は海外経済が減速から脱する状況を前提に分析したが、海外経済の回復時期は後ずれする見込みで、県内景気は弱含みから横ばい。「私見を交えた強気な発言」と断ったうえで、プラス要因として復旧・復興関連需要の県内企業への波及、底堅い個人消費の持続をあげた。

20日開かれた金融政策決定会合での決定も説明した。市場に投入する資金「資産買入等の基金」を90兆円から100兆円に10兆円増額、「貸出増加を支援するための資金供給」の詳細の2つが決まり、物価安定の考え方に関する議長指示を出した。

政治からの要請を踏まえて物価安定の考え方について検討する。中長期的な物価安定のめどは本則としては2%以下、しばらく日本の物価上昇の実績を踏まえて当面1%を目標にし、「強力な金融緩和を間断なく推進していく」。これまでもやってきたが、「結果としてデフレの状況から脱していない」とした。

続く意見交換では、秋以降の経済環境の悪化を裏付ける声が相次いだ。三条商工会議所の斉藤弘文会頭は、自動車や建設機械をはじめ、ことしは後半から景気が減速して不安感が高まっているが、昨年があまり良すぎたので余計に不況感を強く感じているが、ことしは2年前を若干、上回っている。先に経産省、財務省へ寄ったが、とくに経産省には前向きな話が多く、その理由は欧州が危機を乗り越えつつあることや、政権交代に対する期待感。経済に特効薬はなく、景気回復の波に乗れないようでは困るので、地域はその波が来たときはしっかり乗り、活性化するのが商工会議所の役目であり、情報収集していきたいとした。

燕商工会議所の山崎悦次会頭は、三条はいい、燕はだめだということばかりで、とくに燕は会社で温度差があり、メンタルなものかもしれないが、とくに8月過ぎが悪い感じ。商工会議所を退会する人が多く、理由は廃業がいちばん多い。熟練者の高齢化が進み、昔からの金属洋食器が空洞化している。デザインに弱い中小企業を支援するために中小企業庁の地域力活用新事業全国展開プロジエクトでものづくりプラス活性化のアドバイスをもらう事業をはじめ、アジアキャラバン、メード・イン・ツバメに取り組んでおり、海外も捨てられないので情報収集に努める。トヨタの会長も自動車業界も1ドル90円でなければと言っており、雰囲気としては非常に為替の変動あるのではないかと思い、積極的に海外に対して展示会、燕ブランドを打っていきたい。

三条工業会の兼古耕一理事長は、円安が話題になっているが、仕入れは逆に製造原価が上がり、とくに量販店に納入している企業は値上げが大変に難しく、危機感を感じているとした。外注先の高齢化、廃業が進んでいる。内製化、自社に取り込んで合理的なものづくりに取り組まなければならないが、まだまだ中途半端。夏までは順調だったが、とくに海外進出している企業が悪く、仕事が不足していると聞く。良い企業、悪い企業の両極があり、一概にいい、悪いは言えない状況。また、東京、県外以上に最近は地元の企業のマッチング、引き合いが進んでいる。

日本金属ハウスウェア工業組合の池田弘理事長は、「地域の方々が問題意識をひとつにすることが大切」としたうえで、バブル崩壊後、経済が良くなっていると言われるが、景気が良くなったと判断している組合員は少なく、自身も同じ意見とした。高級ホテルが安い中国のハウスウェアを使っている。全体のGDPより個人消費を上げる政策をお願いしたい。現実、金融緩和というが、いらないところにばかり金がいっている。口ではどんどん貸してというが、きちんと困っているところにいく。そういう金融緩和を考えていただきたい。

新潟県作業工具組合の長谷川直理事長は、全体の景気動向が即、影響する業種とよく言われ、夏ごろから停滞感がある。若干、マイナス傾向で、秋にははっきりとマイナス傾向になり、減速した。一部ではリーマンショックのころに似ているというところもある。安部政権に期待しているが、円安がもっと進み、国内景気が上向いてほしい。

日本金属洋食器工業組合の捧和男副理事長は、景況感は悪くなってきた。年末は景気のいい時期なのに、12月はおかしいなという状況。後継者問題もあり、手仕事をどう次の世代を育成していくのか。為替も1ドル100円と言われたが、同組合では100円を超えないと米国でも欧州でも手応えは出てこない。地元でものを作れない状況になってはいけない。

また、斉藤三条商議所会頭は、来年のいちばんの問題として電力料金の値上げを指摘した。東北電力から値上げに理解を求める申し出があり、予想される10%レベルの値上げが実行されると製造業には誠に手痛い。この地域には大変な電力を使う企業があり、経営を圧迫する。「しっかりと政府に要望しないとこの産地は生き残れない」とした。

鈴木市長は欧州の状況、個人消費を上げる政策、金融緩和についてあらためて照内支店長にただした。照内支店長は、欧州の話はそう明るい見通しが持てる状況ではないが、この春先はスペインなどの国債がすごく高くなり、ユーロの存続が可能かとされたころと比べるとリスクは減ってる。ギリシャもスペインも国の問題は大きく、急激に回復して行く状態は見い出し難い。

個人消費を上げるには、直接的に働きかけるのは補助金だが、結局は所得、雇用が上がることがいちばんの根本的な対策。景気を上げることが何としても必要。消費は慎重になっているが、絶対にほしいものは買うのは変わらない。

金融緩和は、すでにかなり緩和がされているが、偏在があるのも事実。金融機関自身が企業と一緒になってもうかる商売を考え、そこに金を回していく目利きの必要もある。

第四銀行燕支店の宮本信秋支店長は、11月に燕市が行ったタイの視察研修に参加し、改めて海外への販路拡大が重要と思った。国内は少子高齢化でマーケットがしぼんでいるが、タイのポテンシャルの大きさを痛感した。タイに限らず、進出先の国の選択は重要。タイは洪水のリスクがあり、失業率は0.7%で人出不足。ことしの4月から最低賃金が4割上がったが、すでに日系企業が4,000社以上進出し、中国と違って親日的な国。海外の最初の進出を考えている場合は非常にやりやすい国。対日工業大学があり、日系企業のニーズに合致した人材を育成しており、裏を返せば日本の技術を求めている。タイの見本市、METALIX 2012に燕市の企業が1、2社出展し、あらたな得意先を見いだすチャンスであり、見本市に積極的に出店した方がいい。

あらためて日本金属ハウスウェア工業組合の池田理事長は、消費を上げるために、前政権の子ども手当など今までもいろいろな手当ての政策があったが、それが遊興費に回った現実もあり、例えた消費手当とか、金ではなく期限付きの商品券をという具体的なアイデアも示した。

続いて労働問題に話を進め、連合県央地域協議会の佐藤春男事務局長は、労働組合でヒアリングすると、7、8月から操業率が低下し、後退している。まだ数社が帰休をとらざるを得ない状況にあるる。燕での電労メーカーは4勤2休の勤務態勢で土、日曜の安い電力料金を使っている。三条の鍛造事業所も最近から4勤2休を取り入れてる。1年間の変形労働時間制で8時間を平準化ではなく、一部で操業度の低いときは7時間、繁忙期は9時間とできるかぎり協力している。海外への視点は不可欠と認識しているが、中小、零細企業が多いなかで、雇用の維持、創出のために政労使で知恵出しをしてほしい。改正された労働法に対応し、高年齢の雇用継続だけでなく、若者の新規採用にマイナスにならないようにしてほしい。

三条公共職業安定所の平田保所長は、10月の全国の有効求人倍率が0.80倍、新潟県は0.82倍で新潟県は改善傾向にある。ハローワーク三条は0.94倍、ハローワーク巻は0.74倍で、これも改善傾向だったが今は足踏み。とくにハローワーク三条は7月から仕事を探す有効求職者が増加に転じている。この先、求人倍率の低下が心配。高校生の就職内定率は、11月末現在で三条が92.2%で前年を11.4ポイント上回り、巻は77.0%で前年並み。内定率が上がったのは、6月20日から早期に求人を受けたため。雇用維持では、雇用調整助成金は三条では前年同期より3、4割、利用が減っている。三条、巻とも200社前後が利用している。

新潟県産業労働観光部労政雇用課の矢野正枝課長は、雇用環境は数字では3年前より改善しているが、中身は伸びているのは臨時や非正規雇用で、厳しい状況がある。労働法制が労働者保護を強化する形で制度改正が行われ、経営者から厳しいという声を聞く。闇雲に頑張ればいい時代でなく、強みを生かすのがこれまで以上に大切。働く人ひとりひとりの力をどう出すかが課題。県内初の特例子会社、燕市のアイテックスで障害者も健常者もなく、働いている人の得意分野を見いだし、生かしていくのが大事と思った。県は仕事と生活の調和、ワーク・ライフ・バランスの推進に取り組んでいる。生産性を上げられる仕組みをつくっていくことが企業の業績の向上にもつながり、経営戦略として取り組む企業増えている。地域の強みもキーワード。燕三条は市民のパワー、新しい取り組みが進んでいる印象がある。いろんな取り組みがつながって回っていくような仕組み、総合力のような形で生かせれば地域の活性化につながる。

最後に「燕三条地域の今後の産業活性化に関する共同声明」を原案通り決め、国定市長が閉会のあいさつをした。

国定市長は、先に国交省へ訪問したときのことを話した。新政権が緊急経済対策として10兆円規模の大型補正予算を編成するのに伴い、来年1月14日に財務省に対して各省が予算案を出すように動いている。同時に霞ヶ関では来年度の当初予算の組み直しを2月上旬をめどに最後の仕込みが始まっているという話だった。ベストは1月14日まで、そこを逸しても1月中にはきょうの議論を含めて政府関係筋に要望するのが最も効果的なアピール方法と思う。

もうひとつの今回の景気対策の大きな目だが公共事業。池田理事長の言う通り金融政策が各企業に波及されないと何の意味もない。景気対策も同様に各市町村まで波及しなければならないが、10兆円規模の景気対策には政府がそのような動きをしてないと感じた。具体的には追加補正は1県当たり10億円にとどめようという財務省の謀略がすでに始まっているようで、それでは市町村でできる公共事業はほとんどなくなり、波及効果はなくなる。

各省庁はしっかり予算要求するが、それに財務省が待ったをかけるといういつもの構図がすでに始まっていることに強い警戒感をもたなければいけない。

燕三条地域として景気対策という果実をいかにしっかりと我々のもとにたぐりよせて、たぐりよせた果実が各企業、各地域に恩恵が預かれる財政運営をし、有意義な活用をしていかなければならない。1年で最も大きな節目だが、そうは言っていられないスケジュール感、景況感なので、具体的な知恵を引き続きいただきたいと述べた。

燕三条地域の今後の産業活性化に関する共同声明

少子高齢化やグローバル化などの進展による国内需要の減少、長引く円高、中国との関係悪化など、当燕三条地域の産業経済にも大きな影響を与えている。

本日、燕市長鈴木力と三条市長國定勇人は、燕三条地域の企業活動を積極的に支援し、将来を見据えた産業振興を図っていく必要があることから、本日開催した「燕三条地域景況対策会議」の内容を踏まえ、次のとおり地域として推進することを表明する。

  1. 景気が後退する厳しい状況のなか、デフレ経済からの早急なる脱却、また、原油価格の高騰や電気料金の値上げなど、地域企業に及ぼす影響が大きいことから、国や県に対してこれら是正のための要望を行う。
  2. 商工会議所をはじめとした各支援機関との連携を強化し、地域企業の経営・雇用の安定化への支援、地塚産業活性化に向けたさらなる支援体制の充実を図る。
  3. 急速な経済のグローバル化が進むなか、海外販路の拡大が不可欠となっている。このため、地場産業振興センターを中心として、海外展開に資する支援策の拡充を図るとともに、中長期的戦略として、経済成長の著しい東南アジア地域における情報の収集や発信のための体制を検討する。

平成24年12月26日

燕市長 鈴木 力

三条市長 國定 勇人


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