慶応2年(1866)の創業から昨年で145周年を迎えた建築工具など販売の(株)高儀=高橋司社長・三条市塚野目=は28日、日本のものづくりにも大きくかかわる子どもたちの理科離れを心配し、理科センターのような子どもたちや地域の産業のためになる施設の創設などを提案、「ものづくりの町 三条」の理科教育振興に役立ててほしいと、三条市に1億円を寄付した。
午前11時に同社の7代目の高橋司(まもる)社長と前市長で5代社長の高橋一夫会長の2人が市役所を訪れ、高橋社長から国定市長に1億円の小切手を包んだのしぶくろを手渡した。
同社は慶応2年にのこぎり鍛冶から始まった。昨年は創立145周年の記念行事を行う予定だったが、3月の東日本大震災発生で延期。ことしになって燕三条地場産業振興センターで記念の見本市を開き、北海道から沖縄の取引先を招待した。今回の寄付もこの一環で、「商売とはお得意さんだけでなく、地域に支えられている」とする地域貢献事業として行った。
高橋会長は、日本の子どもたちが海外に比べて理科離れしているという新聞報道に「日本のものづくりはどうなるんだ」と思った。小中学生はもちろん、幼児のころから理科に親しめる施設があればと考え、「子どもたちのため、地域の産業のためになるようないい施設を創ってほしい」と提案し、その呼び水になればと期待する。
さらに、「将来、三条からノーベル賞をとる人を」、「それには先生なんだよね」と言い、優秀な成績を次々と残す燕市の武道を例に「優秀な指導者が長きに渡って指導をしていること」を指摘。「いい指導者に報酬を惜しんではいけない」、「そういうところに産業界が応援していく仕組みができれば」と話した。
また、短い寄付の懇談だったが、高橋会長から慶応2年にのこぎり鍛冶から始まったという同社の歴史とともに、関東大震災で広まったという「金物の町三条」の産業の変遷、物流の基礎ともいえる話もあった。
家族ぐるみでの付き合いの前市長と市長の懇談は和やかで、高橋会長は「会社は慶応、私は明治(大学出身)」と市長時代と変わらないジョークは健在。指導者が数年で変わってはいけないという話では「(国定)市長さんも」と言い、「大変、重いクリスマスプレゼントですね」と国定市長が苦笑い。産業界での応援という話から、引き続きの支援を市長が求めると「私どもは146年分を持ってきた」と、笑いが絶えなかった。