三条市立栄北小学校(岩崎一成校長・児童148人)の5年生は、PTA行事の募金に寄せられた善意6万0,206円を東日本大震災で三条市に避難している人たちが家族みんなでいられるように役立ててほしいと5日、三条市に寄付した。
午後1時半に5年生の代表4人が市役所を訪れた。4人は善意を包んだのし袋を手に国定勇人市長の前に並び、学校田で育てたもち米を人の役に立てるような使い方がないかと考えたと話し、ひとりずつ順番に寄付のいきさつを話した。
東日本大震災で三条市に避難している人たちのために役立ててもらおうと募金を決めた。1月27日に行った同校恒例のPTA新年の集いで「さいの神」のほか、5年生の収穫したもち米でもちつき大会を行い、あわせて募金を呼びかけた。たくさんの人が募金をしてくれてうれしかった。それらを背の高い市長の顔をしっかりと見上げて話し、たくさんの善意を手渡した。
国定市長は、子どもたちの気持ちを喜び、ほうびにと市長室の中の宝物や窓からの景色、読んでいる本などを説明、ひとりずつ市長のイスに座ってもらったりと大サービスした。
市長室を訪問する児童をくじ引きで決めたと聞いた国定市長は「なんだ、みんなでくればよかったね」と言い、来られなかった5年生のみんなに伝えてほしいと、2年前の3月11日の東日本大震災の発生と原発事故で避難しなくてはならなくなった人たちのことをじっくりと話し始めた。
2年前の3月15日夜、三条市に避難者を乗せた大型バス6台が到着。翌日にも6台が着き、自家用車で命からがら逃げてきた人もあり、合わせて815人が三条市に避難した。それから間もなく2年になるが、今週月曜でも198人が三条市に避難している。
2年前は総合福祉センターの体育館などで寝泊まりしていたが、今はアパートや公共住宅に住んでいる。地震がなければ今まで通りそれぞれの家のある福島県で生活を送っていた人たちだ。
198人は「普通の生活をしながら、今も避難生活をしている」。多くは家族がばらばらになって生活している。子どもを三条市に置いて、福島で以前からの仕事を続けている親もいる。週末だけ家族で過ごし、平日は親のいない家庭も多く、「いろいろなことがあって今の状態だが、2年たっても普通の生活とは違う」。
「でも僕たちは2年もたっているから忘れちゃう。でも避難している人たちは不便な思いをしている」、「だから、いつまでも優しく応援していかなくちゃいけない」とていねいに話した。
東日本大震災から2年になり、今の状態が当たり前になるなかで応援しようと寄付を思い立ったのは「本当にすごいこと。5年生は人としてとっても尊いことをしていると伝えてください」と敬意を表した。
これで終わりにするのではなく、「寄付は大変だけど、1週間か1カ月にいっぺんでも避難している人の生活を思い出してみるとか、被災したところがどうなっているか調べるとか、ぼくたちにできるもう1つの方法を覚えていてくれるとありがたい」と課題も示し、「みんなの勇気ある行動に感謝する」と気持ちを伝えた。それまで笑顔だった子どもたちは、国定市長の話を真剣な表情で聞いていた。