振り込め詐欺をはじめとする特殊詐欺抑止のための全国一斉「声掛け訓練」が6日、各警察署と金融機関で実施された。三条署では午後4時半から三條信用組合本店=野上渉理事長・三条市興野3=で訓練を行い、特殊詐欺被害の最後のとりでとなる金融機関に協力を呼びかけた。
「特殊詐欺」は、電話などを使い、対面することなく不特定の人から現金をだまし取る手口の詐欺を指す。オレオレ詐欺や架空詐欺などの振り込め詐欺をはじめ、最近ではもうけ話などを持ちかけて、未公開株や社債の購入をすすめる「金融商品取引名目」の特殊詐欺が増加している。
三条署によると、平成24年の県内の特殊詐欺被害は、151件で被害総額は約8億5,117万円と過去最悪。金融商品売買に絡む詐欺が激増しいること、レターパックや宅配便などで送金させる手口が急増している。
訓練には同組合の7店舗から窓口担当者など2人ずつと本部、役員など18人が参加。三条署の4人が講話や想定訓練の被害者役となり、詐欺の手口や状況、声を掛ける方法などを体験してもらった。
被害者が金融機関の窓口で、振り込みや引き出しを依頼する状況を想定して、窓口担当者が声を掛ける一方、警察に通報して特殊詐欺の被害を未然防止する訓練。三条署の警察官が被害者役、同信用組合の職員が、被害者に声を掛ける役と窓口担当職員を支援する役になり、「振り込め詐欺(架空請求・ワンクリック詐欺)」を想定したATM編、「特殊詐欺(社債購入詐欺)」を想定した窓口編の2つのシナリオに沿って模擬訓練した。
高齢者の被害が多い社債購入詐欺訓練の想定は、65歳くらいの男性宅にA社のパンフレットが送られ、後日、社債購入を進める電話があった。「これまでB社の社債を購入したことがありませんか、換金して還付します。そのためにはC社の社債を購入する必要がある」、さらに「あなただけの特別なお知らせですので、ほかの人には話さないようお願いします」と指定した口座への入金を求められた。
男性は、昨年B社の社債300万円を購入したことがあり、実は詐欺に遭ったかもしれないと思っていたが、A社からの電話やホームページを確認し、少しでも取り戻したいと、申し込むことを決め、定期預金300万円を解約して、指定の口座に振り込もうと口座番号の記載されたA社のパンフレットを持って同信用組合の窓口にやってきた。
窓口で応対した職員は、多額だったことや、早くしてほしいなどと落ち着きがないこと、社債購入を持ちかけた詐欺の手口が多いことなどから上司に相談、おかしいと思った上司が対応に加わって男性の話を聞き、男性に詐欺の可能性があることを伝え、被害を防ぐ。
訓練とはいえ、信じ込んでいる男性の気持ちを変えるのは難しく、対応にあたった職員はなかなか理解してもらえない男性に繰り返し話をして、なんとか詐欺の可能性をわかってもらい、警察に事情を話した方がいいとすすめ、三条署に通報した。
講評では、実際の相談では、詐欺だと気づいてもらうまでにかなりの時間がかかる場合や、怒り出す人もいると紹介。高齢者は家庭で話す機会が少なくなると、詐欺の電話でもうれしくなってだまされやすくなるため、日ごろから家族が声をかけたり、話ができる雰囲気をつくることも大切とアドバイスした。
加害者側には被害者の名簿が出回っていて、繰り返し被害に遭う人も。認知症で以前にだまされたことを忘れて振り込みをを繰り返すケースもある。参加した職員は、三条署員のアドバイスや事例の紹介などをメモをとりながら聞いていた。