三条市南五百川、八木ヶ鼻温泉「いい湯らてい」は4日から8日まで、古くは村松藩の御用紙として納められていた三条市下田地区で復活した和紙「大谷地和紙(おおやちわし)」の製作現場を案内しようと、入館者を対象にした大谷地和紙紙漉き見学と体験を行った。
見学は昨年に続いて2回目で、体験は今回が初めて。開催日に入館者の参加を受付けて実施した。
午後1時半に同施設を出発し、車で5分ほどとの作業場へ。大谷地和紙保存会の金子久俊代表ら5人ほどが紙すきの作業を行っており、参加者は作業を見学。体験は、参加費500円で希望者のみが参加し、紙すきを体験して、はがき4枚を作った。
体験は、冷たい水と繊維状の「紙素」の入ったフネにハガキ4枚サイズの木製の枠を入れては2、3回すくって和紙を製作、好きな木の葉などを並べ、さらにもう1度紙素をすくってその上に重ねて体験者の作業は終了。その後、一日かけてハガキの上に石の重しをのせてプレス、板にはりつけて乾燥させ、オリジナルの和紙のハガキが完成することから、できあがったハガキは後日、郵送で製作者に届く。
参加者は、原料はなんですか?、この水は水道水?と次々と質問。体験に参加した女性は、15分ほどの作業だが、「水が冷たい」、「すくった紙を重ねるところが難しかったが、楽しかった」と、できあがりを楽しみにしていた。
大谷地和紙は旧下田村の大谷地地区で農閑期の副業として1621年に始まり、同地区は江戸時代、年貢をコメの代わりに和紙で納めるほどの和紙の産地だったが、需要の減少により昭和35年ころに製造が途絶えた。2008年に同地区の有志が大谷地和紙保存会を発足し5年目。半世紀ぶりの和紙づくりの復活で、材料の煮る方法、紙をすく方法など試行錯誤の部分もあるという。また、注文も少しずつ増え、ことしは絵や書を描く人からの注文で1.35m×0.35m、1m×0.66mなどの大型の紙の製作にチャレンジする。
保存会のメンバーは地元の約50人で、紙すきは1月から3月頃までの作業だが、地元で栽培する原料の「コウゾ」の刈取りは昨年のうちに行い、70センチほどの長さに整えた木を束ねて釜で蒸し、皮をはいで乾燥させておく。その後、紙すきをする分を水でもどし、さらに黒い外皮を取り除き、灰を入れて数時間煮る。さらに、汚れなどを取り除き、皮が繊維状になるまで石の上で木製の道具を使って叩きほぐす。その繊維状になった紙の素を麻で作った袋に入れて紙漉きフネに浮かべ、水の中にふわふわと浮かぶ紙素をすくって製作していく。
「いい湯らてい」では、大谷地和紙をはがきサイズ、賞状サイズなどを販売しているほか、館内のレストラン「Gozzo Latte」のメニューブックに大谷地和紙を使用して地元和紙をPRしている。