第41回の燕三条地域経営者技術研究会、通称「森下塾」が20日、燕三条地域地場産業振興センターリサーチコアで開かれ、今回も明治大学政治経済学部の森下正教授から「街作りは100年の取組〜湯布院の起業家に学ぶ〜」のテーマで聴いた。
燕三条地域の経営者など39人のうち17人が出席。森下教授は以前から学内の研究で調査している日本一とも言われる温泉地、湯布院の取り組みについて話した。
1970年代半ばまでは閑古鳥のなく温泉地だったが、ドイツの最も有名な温泉地、バーデンに学ぶべきとという書籍に出会い、地元3人のキーマンが中心となって「静けさと空間と緑を守り続ける」100年がかりの取り組みを始めた。
1975年に大分中部地震が発生し、湯布院は壊滅的な被害を受けたという風評被害に見舞われたが、湯布院が健在であることをPRしようと観光協会が辻馬車の運行を開始し、これが評判を呼んで立ち直った。同時に、ゆふいん音楽祭や湯布院映画祭といったイベントを次々と立ち上げた。
一方で1980年代後半になるとバブル経済で湯布院にもリゾート開発の並みが押し寄せたが、条例を制定して対抗。その条例に待ったをかけた当時の建設省にも法律論で戦うのではなく、湯布院の魅力を訴えて味方につけた。
森下教授は、湯布院の取り組みは地域が一丸がキーワードとし、企業だけでなく農林漁業、企業群、組合や異分野団体との連携、さらに一般市民を巻き込み、他地域の助太刀も巻き込むことをあげた。
もちろん問題もあり、農業や小売業からは批判もある。けんかになることもあるが、けんかすることはいいことだという考えで、それは相互信頼の組織で深い議論ができているから。小さな町なので顔を合わせないわけにはいかず、翌朝にはふつうに生活していることも紹介した。
参加者からは質問だけでなく、実際に昨年、湯布院を訪れた人が商店街は若い女性をターゲットにした店になっているといった情報提供や、湯布院に関連した質問が一通り終わったあとは、お勧めの書籍を紹介する人もあり、森下教授が話すだけの一方通行ではない学び合う場になっていた。このあと懇親会に移った。
2004年に明治大学政経学部が50人の学生と10人の教授で燕三条で地場産業調査を行った。当時の中小企業大学校三条校の校長と明大教授が知り合いだった縁もあり、地元に情報の還元をと明治大学オープン・リサーチ・センター事業として3人の教授が燕三条で研究会を始めた。
教授の定年退職や在外研究もあって、今も続いているのは“森下塾”だけ。2カ月に1回のペースで研究会を開いている。森下教授も会員も手弁当で活動を続けている。研究会で毎回2,000円を負担してもらうが、外部講師を招く費用などに充てている。会では誰にでも門戸を開いている。問い合わせは事務局の瀬戸明さん(電話:090-1543-5874)へ。