燕市産業史料館では、1日から31日まで「スプーン展2」を開き、燕三条地域を中心にさまざまなジャンルの作家21人がいずれもスプーンをテーマに制作した意欲的な作品を展示している。
一昨年に同様の作品展を開いて以来2回目の開催。世界へ羽ばたく燕市の産業の礎を築いたスプーンをテーマに作品を制作してもらうことで、それぞれの作家の感性や表現方法を際立たせようという趣向だ。
作品の制作は同資料館が作家一人ひとりに依頼した。作家にとっては金にならない仕事で、お題が与えられているだけにほかの作家と比較されがちなのを覚悟。作品に作家のプライドや意地も垣間見える。
鎚起銅器の技術で作られた金工作家の岡本秀雄さん=燕市=が制作した「袋スプーン」。その制作のプロセスを想像すると驚く。スプーンの皿の部分が厚ぼったくなっているが、これは空洞になっているため。1枚の銅板から作品名の通り袋状になったスプーンを作った。
柄の部分は細いので内側からたたくことはできない。皿の部分に表現された虎も外側から打つしかないが、中に松ヤニを詰めてたたいたと思われる。柄にも龍の図案が施され、作家、職人としての挑戦が凝縮している。
人間国宝の金工作家、玉川宣夫さん=燕市=は得意の木目金を施した「木目金スプーン」を披露。異なる金属のはぎ合わせから作ったスプーン、茶道具でもある伝統的な灰匙(はいさじ)、金づちがへこんでしまうほど困難を極めたステンレスを熱間鍛造して作ったシャベルのように大きなスプーン。カラフルなプラスチックスプーンを透明なプラスチックケースに盛った現代アート的な作品や「匙」の字を分解して書道、プリカジュールという高度な技術で20回以上も焼いてできた七宝作家の作品もある。
また、燕市内のスプーンメーカーや工業デザイナーに聞いた「プロがこだわるスプーンを見るポイント!」を書いたプレートも展示しており、産業として洗練されてきたスプーンに求められる要素と作家の作品群を対比させて鑑賞するのも楽しい。
10日午後2時から作品解説会を開く。申し込み不要だが、入場券が必要。会期中の休館日は3月4日(月)、11日(月)、18日(月)、21日(木)、25日(月)。開館時間は午前9時から午後4時半まで、入館料はおとな300円、子ども100円。土、日曜と祝日は燕市内の小中学生と付き添いの保護者1人が無料。出展作家は次の通り。敬称略。
▲石高靖男(金工)燕市▲石山裕子(染織)新潟市▲泉田佑子(書)加茂市▲市川正美(金工)燕市▲枝村左門(七宝)三条市▲岡本國雄(金工)燕市▲岡本秀雄(金工)燕市▲椛澤伸治(金工)三条市▲小山光秀(漆芸)新潟市▲佐藤公平(陶芸)新発田市▲霜鳥健二(彫刻)燕市▲高橋純一(金工)燕市▲玉川達士(金工)燕市▲玉川宣夫(金工)燕市▲塚原雅治(ガラス)新潟市▲鶴巻貴子(版画)三条市▲西片亮太(金工)弥彦村▲馬場省吾(金工)長岡市▲細野五郎(金工)燕市▲渡邊和也(金工)燕市▲渡邊トシフミ(彫刻)東京都(新潟市出身)