燕市立燕東小学校(外山健蔵校長・児童247人)は4日午後、同校で「かけはし集会」を開き、難病のために17歳で亡くなった燕市の岡村可奈子さんが作詞した曲『笑顔を忘れないで』を地元燕市に住むソプラノ歌手、桜井綾さん=四ツ屋=の演奏で児童から聞いてもらった。
体育館に全校児童が集まった。燕市の合唱団「コーロ・スプラウト」の田野正則代表が『笑顔を忘れないで』が生まれた経緯などを児童に話したあと、桜井さんは弥彦村のピアニスト、森田雅代さんの伴奏で歌った。
春らしい淡い黄がベースのドレスを着た桜井さんの透き通るような歌声は、体育館の隅々まで満たすように響いた。演奏は聞き慣れた『笑顔を忘れないで』とは明らかに違った。『笑顔を忘れないで』は合唱曲のイメージが定着しているが、今回はソロ。桜井さんと森田さんはこの日に向けてメールなどを使って打ち合わせ、ソロ用に伴奏をアレンジした。
ピアノはアルペジオだけではなく、オブリガート的な旋律も奏でて桜井さんの歌うメロディーとからみ、呼応して新たな曲想を生み出した。『笑顔を忘れないで』を歌い慣れた児童もその違いを感じとり、目を輝かせて聴き入っていた。
大きな拍手を受けて演奏を終わると、今度は桜井さんが児童の中心に移動した。児童と対面するのではなく、児童と肩を並べて同じステージの方を向き、同じ目線で全員合唱した。桜井さんは自身が特別な存在ではなく、自身も子どものときは同じように体育館で歌っていた児童のひとりであったことを語らずに児童に伝えているかのようだった。
児童代表は桜井さんらに「きょうのかけはし集会で学んだことは、いくらつらいことがあっても、笑顔を忘れないでいれば大丈夫だということです」と話して礼を言った。
田野さんは、「人の痛みがわかるおとなになってください。皆さんには、これだけの学校の仲間、家族、地域の人、そして何よりも立派な先生がいますから」と願った。桜井さんは「みんなと歌ったから、もっとわたしも頑張れるという気持ちになりました。競争しましょう。頑張り競争しましょう。どうぞ皆さん、あしたから、またこの歌を胸に秘めて頑張ってください」と自身も児童に感謝した。
同小学校では『笑顔を忘れないで』に親しんでもらおうと、一昨年から毎年「かけはし集会」を開き、燕地区更生保護女性会の会員などから『笑顔を忘れないで』を児童に指導してもらった。今回は桜井さんが指導する燕市の第九を楽しく歌おう会の演奏会で桜井さんの歌声にほれた地域支援コーディネーターが、ぜひ児童にも一流のプロの演奏を聴いてほしいと桜井さんに出演を依頼して実現した。
桜井さんは国立音大大学院声楽専攻オペラ科を修了し、2000年には第35回新潟県音楽コンクールで大賞を受賞。イタリアのヴェローナやミラノで学び、新潟県立大学で非常勤講師も務める。
桜井さんが『笑顔を忘れないで』を歌ったのは、今回が初めて。「もう歌わないでおこうと思った」と桜井さん。というのも「わたしも親なので、どうしても気持ちが心に響いてしまいます」、「真っすぐ歌うということは考えました。元々の詩のすばらしさが出るように。気持ちが盛り上がり過ぎないように歌うのは難しいです」と込み上げる思いが歌に影響しないようにコントロールするのが難しかった。
亡くなった岡村可奈子さんを「すごくそばに感じた時間でしたね」。児童には「静かにぴくりともせず本当に良く聞いてくれました」と驚き、「何かを伝えることができたならうれしいです」と話していた。