燕市成人式が17日、燕三条地場産業振興センターで行われた。絶好の好天に恵まれ、平成4年度に燕市で生まれた対象の男434、女398の計832人のうち、82.7%にあたる688人が出席した。ことしの成人式実行委員会(佐藤一稀実行委員長)も東日本大震災をテーマにし、黙とうから始まった。
開式のことばで藤沢健一教育長は、一昨年は東日本大震災の9日後に先輩が立派な成人式を行い、ことしの成人式実行委員会も一昨年、昨年の震災復興のテーマを引き継いだことを紹介。「新成人の皆さんたちの温かいまなざしと、しっかり先輩たちの思いを引き継ぐんだという強い意志を本当にうれしく思います。そして敬意を表します」と述べた。
式辞で鈴木力市長は、新成人は震災後の混乱の中で高校を卒業したことから振り返った。今も被災地の復興は思うように進まず、不自由な生活を余儀なくされている人が数多くあり、燕市内でも約130人が避難生活を送っている。
新成人が船出する現代社会は景気低迷、環境問題、少子高齢化など課題が山積している。燕市の新成人がふるさとに集合する成人式を「あらためて自分の人生の目標を定めるとともに、これからの社会に対し、どう行動していったら良いか一人ひとりが真剣に考える大切な日にしてもらいたい」。
東日本大震災は試練を与える一方で、きずなや支え合いというパワーを教えてくれた。新成人は漫画「ONE PIECE(ワンピース)」を読んで育った世代で、登場人物のサンジ、ウソップ、ネフェルタリ・ビビの言葉を引用し、「きょう燕市で一緒に成人式を迎えた掛け替えのない仲間がいることを決して忘れないでください」。
「どうか皆さん、どこにいても仲間とともに育ったふるさと燕市のことを思い続けてください。そして燕市発展のため、ともに歩んでいってください。わたしは君たちが燕市の出身だよと友人に胸を張れるような町にするよう精一杯、努力していきます」、「わたしは君たちがそれぞれ自分の夢や希望に向かって歩んでいくとともに、これからの燕市、さらには日本の新しい時代を切り開いていく推進役となってくれることを心から期待しています」と結んだ。
新成人の「二十歳の決意」で、すでに公務員の就職が決まった新潟市・新潟公務員法律専門学校2年生の剣持優さん=燕中出身=は、東日本大震災の被災地、宮城県の南三陸町と石巻市でボランティアを行ったことにふれた。初めてのボランティアは、津波ですべて流された町を前に無力感を感じたが、黙々と作業する現地の人に逆に元気をもらった。二度目のボランティアは漁師の仕事も手伝い、復興に近づいていることを肌で感じた。
大切なのは、震災を末長く記憶していくこと。まだ半人前だからこそ、「今の自分に満足するのではなく、常に向上心をもち、日々の生活を過ごし、災害で亡くなった大勢の方の分まで精一杯、生かなくてはいけない」。
新潟市・国際メディカル専門学校2年生で看護師を目指す柄沢桜香さん=分水中出身=は、看護師は人の命にかかわる仕事なので一つひとつの行動に大きな責任があるが、「その分、とてもやりがいのある仕事」と、看護師という職業への思いを話した。「今、わたしがこの夢を目指せているのも、家族がそばで支えてくれているおかげなので、少しずつ恩返ししていきたい」と家族や恩師などさまざまな支援に感謝した。
式典のあと、難病のために17歳で亡くなった燕市の岡村可奈子さんが作詞した曲『笑顔を忘れ ないで』のメッセージをプロジェクターで映し、アトラクションは恒例の大抽選会。加えてことしは、来年度に燕市が取り組む若者会議のPRを行い、燕市の若手職員が登壇し、「燕の未来をいつ考えるか?」、「今でしょ!」のどこかで聞いたような言葉のコール&レスポンスで新成人の参加を呼びかけた。
新成人は特攻服のような服を着た男性もいたが、男性は圧倒的にダークスーツ。女性は例年になくドレスやはかまが少なく、全員と言っていいほど振り袖ばかり。式典もそれほど騒がしくならず、落ち着いた、まとまった雰囲気だった。
また、燕市長はブログ「燕市長 鈴木 力 の日記」に「新成人へのエール」として式辞の全文を掲載した。