旧新潟交通電車線を走っていた車両、通称「かぼちゃ電車」と旧月潟駅=新潟市南区月潟=を保存する「かぼちゃ電車保存会」(丸山裕会長)は24日、冬期閉鎖していた車両を雪から守っていた冬囲いをはずし、青空の下で冬眠から目覚めた。
白山前ー燕駅間を結んだ新潟交通電車線は、1999年4月の廃線まで66年間にわたり「電鉄」と呼ばれた親しまれ、中ノ口川沿線住民の足となった。緑と黄に塗り分けられた車両がカボチャを連想させることから、「かぼちゃ電車」と呼ばれた。
廃線の翌年2000年に旧月潟村の呼びかけでボランティアによる保存会が発足。車両3両と月潟駅の駅舎を保存し、駅周辺の清掃や日常の維持管理、補修を続けている。毎年恒例の大仕事が冬囲いだ。車両は野ざらしなので雪を積もらせたままにすると腐食が一気に進むため、保存には冬囲いが欠かせない。
冬囲いの手法も毎年、改良を重ねて数年前にほぼ確立。突起部分ははずしたり、気泡緩衝材を巻いて保護したりしたうえで、10メートル四方もある巨大なブルーシートで覆い、さらにその上からシルバーのシートで覆う。形状を箱に近くするほどしっかりと覆うことができるため、除雪車の先端にはつっかえ棒のような木柱を取り付けたり、屋根の上には木枠を載せたりといった工夫もある。
冬囲い作業は10月下旬から準備を始め、11月の約1カ月間をかけた大仕事だが、はずすのは速く、半日仕事。24日は保存会の会員10人と新潟大学鉄道研究部の部員3人が参加して午前9時から初めて正午過ぎには終わった。シートをたたんで運ぶ一輪車には、横に「焼鮒保線」とある。「焼鮒」はかつて電鉄の旧黒埼町にあった駅名で、この一輪車も貴重だ。
乗り物好きな子どもたちには、わくわくする空間だ。絶好の好天に恵まれ、作業中からぽつぽつ親子連れが訪れ、散歩する近所のお年寄りは「シートがはずれたね〜」と春を実感。会員は「学生さんが手伝ってくれるようになってだいぶ楽になりました」と“鉄研”の協力に感謝。部員の学生は「ことしはあったかくて作業もすごく楽しい」と張り切っていた。
作業後はみんなで弁当を食べ、午後から年に一度の総会を開いて今年度の活動を報告、来年度の活動計画などを決めた。かぼちゃ電車は休日のほとんどは会員が訪れて車両のかぎを開けるので、中に入ることができる。