燕市分水地区で春本番を告げる第71回分水おいらん道中が21日行われた。雨やみぞれまで降る季節外れの荒天に見舞われ、平成15年以来10年ぶりに分水総合体育館での開催となったが、フロアからギャラリーまで見物客がぎっしり埋め尽くした体育館できらびやかな花絵巻を繰り広げた。
分水おいらん道中は大正13年ころから催されていた地元有志による仮装行列が起源とされ、昭和9年に発足した「分水路花の会」が11年から花にちなんだ行事をと「おいらん道中」を始めた。春の名物行事として県外にも知られ、近年も8万人を超す観光客でにぎわっている。
ことしはおいらん役に84人の応募があり、信濃太夫に渡辺礼さん(21)=新潟市江南区・新潟薬科大学=、桜太夫に村山まみこさん(21)=燕市分水旭町・会社員=、分水太夫に文珠川佐江子さん(32)=東京都台東区・主婦=、そして写真撮影用の染井吉野太夫に杣木あゆみさん(29)=燕市国上・主婦=を決めた。
道中では傘持ちとほうかんがつく。さらにかむろ、舞妓など総勢70人の付き人を従え、おいらんは独特の外八文字の歩き方を披露しながら進む。これまで大河津分水桜並木のあとに地蔵堂本町通りで道中を行ったのをことしは順序を逆にし、両会場で飲食物販テント「つばめるしぇ」を開くなど新機軸を打ち出した。
道中は肝心のサクラの開花期と合わないことが多いが、一方で開花のタイミングが合うと雨が降るというジンクスもあり、今回はそのパターン。花冷えどころでない2月下旬並みの厳しい寒波に見舞われ、雨がみぞれに代わって降ることもあった。
体育館での道中は、ステージで地元分水太鼓が演奏して露払い。午後1時からフロアの中央に見物客が陣取り、その周りを道中が時計回りに進む形で行い、見物客を入れ替えて3回行った。
途中で2回ほど道中を止め、おいらん役が外八文字と呼ばれる独特の足運びを披露した。高下駄をすりながら外側に高下駄を振りだし、地面にすりながらゆっくりと足を前へ進めるもので、道中のいちばんの見どころだ。このタイミングでカメラのシャッター音が会場に響いた。
屋内だからといって悪いことばかりではない。見物客が多くて道中の部分しか見えないが、体育館では行列の最初から最後まで一望できる。コンパクトな空間に見物客が密集するので劇場のような一体感があり、外八文字を終わったときや道中が退場するときは大きな拍手。道中の見物という点では違った盛り上がりに見物客も大満足だった。