三条市歴史民俗産業資料館は、6月16日まで平成25年度春の企画展「屏風絵の世界ー描かれた中国ー」を開いており、三条市の名誉市民で漢学者だった諸橋轍次博士(1883-1982)がことしで生誕130周年になるのにちなみ、三条にゆかりの文人が諸橋博士が学んだ中国を描いた屏風を中心に展示している。
5月12日まで前期、14日から後期と2期に分けて開き、前期は8点、後期はそのうち4点を残して新たに4点を加えた8点を展示する。
前期で最も大きな作品は、三条文人の藤沢越堂が描いた六曲一双の「山水図屏風」だ。大正から昭和の間で制作されたと思われる初公開の作品。全面に下地を白く塗ってあるうで、隅とのコントラストが強く、華やかな印象だ。
注目は向かって右の屏風の中央に描かれた山。その垂直にそそり立った崖は三条市下田地区の奇勝、八木ヶ鼻そのものに見えてくれる。そう思って見ると、その手前を流れる川が五十嵐川に見えてくるし、川辺に立つ建物が、同じように八木ヶ鼻そばの川辺に存在したと言われる私塾を連想させる。当時、越堂が八木ヶ鼻でスケッチをしたのではと想像すると、なんともロマンをそそる。
江戸の狩野梅笑が描いた六曲屏風「虎渓三笑図屏風」を展示する。中国の名峰、廬山(ろざん)にまつわる故事を山水画の趣で描いている。
三条文人の五十嵐華亭の弟子、巻梧石が若いころ「華暁」と名乗った時代に描いた六曲屏風「黄石公張良図屏風」も展示する。梅笑はたびたび越後を訪れた。華亭もその薫陶を受けており、梧石は梅笑からの流れをくむことになる。展示作品は、漢の高祖(劉邦)の重臣、張良の若き日のエピソードを描いたもので、多くの人が知る梧石の作風とは異なり、華亭の影響を色濃く残した描写だ。
ほかにも三条文人行田雲涛の弟で村松へ養子に入った林泰岳、雲涛の親せきの行田魁庵、そして森山信谷の作品を展示している。月曜と月曜が祝日の場合はその翌日が休館、開館時間は午前9時から午後5時まで。入館無料。