埼玉県さいたま市のレストランや農家、種苗会社でつくる「さいたまヨーロッパ野菜研究会」の関係者が、このほど燕三条地域の若手農家などでつくる「燕三条イタリア野菜研究会」(内山徳寿会長・会員30人)を先進事例として視察、連携の可能性も模索した。
「さいたまヨーロッパ野菜研究会」は、さいたま市内の生産者、流通業者、飲食店の協同による市場ニーズに基づいたイタリアやフランスをはじめ西洋野菜の生産と供給体制の構築を目指す地産地消のプロジェクトに取り組んでいる。
研究会のメンバーでイタリア料理店を運営する(株)ノースコーポレーション代表取締役の北康信さんが、4月に放送されたNHKの番組「あさイチ」で「燕三条イタリア野菜研究会」の紹介を見たのが視察のきっかけ。自分たちと同じことをしている農家があると知り、同研究会を支援するさいたま市産業創造財団とともに、三条市を通じて連絡をとり、4月26日に燕三条イタリア野菜研究会(愛称「イタ研」)を視察した。
視察には北さんとさいたま市産業創造財団の中小企業診断士2人、さいたま市経済局職員1人の4人で訪れた。イタ研の内山会長、飯塚英晃副会長、事務局の白野智久さん、三条市経済部地域経営課などの市職員ととともに、きっかけとなったテレビ放送に登場した飯塚農園と大箭裕一さんのイチゴを栽培するハウスの2カ所を訪れたあと、市役所で意見交換した。
さいたま市は、ワインとチーズの一人当たりの消費量が日本一という「イタリアンな街」という。イタリア料理店やフランス料理店などで使う野菜が、国内では高価だったり、入手が難しかったりして、ほかの野菜で代用せざるを得ない場合も多い。人口123万人の大都市だが、市街地から車で15分も走ると田んぼや農地が広がり、地産地消に恵まれ、西洋野菜の種を扱う大手の種苗会社もある。
その環境のなかで、さいたまヨーロッパ野菜研究会は、本場の味、野菜を提供したいというシェフの願いをかなえて新たな特産農産物の創出し、地産地消のアピールで市内の農業と商業双方のブランドイメージ向上を図りたいと発足した。
生産農家の参加拡大なども課題のひとつで、農家が自発的に活動するイタ研の仕組みや考え方を聞いた。内山会長らは、燕三条地域はさまざまな野菜や果樹が生産される多品目産地で、これといった特産品がないという特徴を逆手にとり、「特産品はないけど、なんでもある」を強みにしたと話した。
20代から40代のメンバーでサークルのように取り組み、メンバーの農家と、イタリアンレストランとシェフや和食の料理人と一緒に酒を飲みながらの情報交換も欠かさない。飛び込み営業の経験談や生産の失敗談も話し、「最初は手弁当でもうからない」と目先の利益を期待しては続かない。
見たこともない野菜を少しずつ作り、シェフに生育状況や出来栄えを見てもらいながら、流通させることができる。知らない野菜でも同じ科の栽培方法の役に立つ。笑顔で話すイタ研メンバーはポジティブだ。
意見交換のなかでも、今後、さいたまの生産者らとともに再訪したい考えや、同じ野菜でも埼玉と新潟では収穫時期に違いがあると思われることから互いの取引の可能性も話題になっていた。