ことしも5月15日に行われる三条まつりの大名行列を前に、行列で御輿(みこし)を先導する天狗(てんぐ)の練習が6日、始まった。
10万石の格式とされる三条まつりの大名行列は、若衆会や神職、総代、先供、傘鉾などで編成。その中心に位置し、神輿に納めた御霊(みたま)を先導するのが、導祖神の天狗だ。
行列では、赤い天狗面に鳥兜(とりかぶと)をかぶり、朱色か緑色の着物をまとう。鉾(ほこ)を手に、高げたで邪鬼を踏みしめながら進み、市民の健康と安全を守ると伝わる。
高げたはの歯は、高さ2尺約60センチで、厚さは5分の約1.5センチ。八幡宮から出発する「ふみだし」の時だけ2本歯で、天狗役を次の人にバトンタッチして以降は、その歯が1枚で、横から見たらアルファベットの「T」のような1本歯の高げたをはく。
その天狗役を務めるのは、三条導祖神昭三同意会(石崎勝海会長・会員23人)で、市内に住む39歳から74歳までの男性。
行列の天狗は神であり、その役を務める会員は毎年、5月1日から精神を清める精進潔斎(しょうじんけっさい)に入る。あわせて5月6日から13日まで毎晩、午後6時半から8時ころまで、行列が出発する八幡宮鳥居前の八幡小路で、一本歯の高げたで歩く練習を行っている。
練習初日の6日、日中は汗ばむほどの陽気だったが、練習開始間もない午後7時の気温は11.1度と冷え込んだ。西風も強まり、上着を着込んでも寒いくらいだが、会員は藍色のそろいの作務衣で練習した。
高下駄をはいた会員は、高さ約2.8mの鉾の代わりに木製の練習用を右手にもち、1年ぶりの感覚を取り戻すようにゆっくりと歩く練習をした。繰り返すうちに、高下駄が高く上がり、下駄をアスファルトに力強くつくときの「かん」という音も響いてきた。
暗くなった八幡小路を本町通りまで進み、往復約500メートル余りの練習。下駄の鼻緒を親指と人差し指でしっかりとはさみ、背筋を伸ばしながら、バランスをとって歩く、足の先から頭の先まで神経を使う緊張感をもった動作で、寒さのなかでも汗が光っていた。