日本美術院特待の日本画家、穂苅春雄さん(79)=燕市分水桜町=は16日、燕署の新庁舎新築を記念して間もなく取り壊しが始まる旧庁舎を描いた作品1点を同署に寄付し、同署から感謝状を受けた。
作品はことし2月からつい最近までかけて描いた水彩画で、F30号で縦90センチ、横72センチ。道路をはさんだ向かいから旧庁舎の正面を描き、ドイツ製の耐久性の高い水彩絵の具で着色した。ふだんは正面駐車場に車がとまっているので見えない部分もあり、現場へ4回、足を運んだ。作品では庁舎正面しか描かれていないが、庁舎の横へも回って構造を確認した。
ふだんはあまり気付かないが、正面の玄関脇には3階屋上まで縦に細長く群青色のタイルを張った部分があるのが印象的。穂苅さんは「空がいちばん難しかった。これがうまくいけば半分くらい終わったようのもので、それくらい気を使った」と話した。
同署の新庁舎は11日に開署。旧庁舎は昭和38年(1963)の建築からちょうど50年たち、6月初めに解体工事に着手し、8月の盆前には本体の解体を終わる予定だ。
同署の中村栄署長は、穂苅さんが地元の風景を描いた作品を見たのがきっかけで、古い庁舎を絵画にして残せたらと、穂苅さんに旧庁舎を描いてもらえないかと穂苅さんの地元にある分水交番=燕市地蔵堂=に相談したところ、穂苅さんと付き合いがあったことから間をとりもってくれて実現した。
「以前、分水交番の前に住んでいたので、(交番勤務の)歴代の方と仲良くさせていただきました」と穂苅さんは依頼を快諾した。
中村署長は「色紙か10号くらいの作品を想像していたので、こんな立派な絵になるとは」とびっくり。署内の署員や市民に見てもらえる場所に飾ることにしている。警察は転勤するので、「昔のことが意外にわかりません。こういう歴史があり、市民に支えられて警察があるということを引き継いでいただくのが大事」と喜んだ。
穂苅さんは「ほかの所は危険ですけど、警察に展示しておけば絶対、大丈夫ですから」と盗難の恐れがないことににっこり。「わたしの絵を飾っているだけで十分です」と言い、「ロビーに4、5点、飾っていただいて」とほかにも小品を寄付したい考えも話していた。今回の作品はロビーに飾る予定だ。