2011年7月29日の新潟・福島豪雨では土砂崩れなど大きな被害を受けた三条市下田地区の牛野尾集落は、それから2年近くになる今も半数以上の墓が壊れたり、埋まったりしたまま。せめてもの供養と復興のシンボルになればと2日、地元団体が集落の墓地にサクラ30本を植樹した。
牛野尾地区は、下田地区の奥地で守門川に沿った集落。2011年の豪雨で各地で土砂崩れが発生し、道路の寸断、住宅の倒壊といった大きな被害が発生した。翌12年4月にも同じ場所で土砂災害が発生したが、地域住民が連携して避難し、いずれもけが人などは出なかった。
守門川右岸側の小高い斜面にあった集落の墓地は、11年の豪雨で崩れ、40余りあった墓の半数ほどが土砂とともに流されたり、埋まったりした。
豪雨から間もなく2年。同地区では砂防ダムの建設や復旧工事も進んでいるが、墓地は二次災害を防ぐために山肌を削る応急工事は行われたが、地盤が緩んでおり、経費的にも同所での墓地の再生は困難。集落を離れた人の墓もあり、再生が難しいことから、壊れた墓石などがそのままになっているものもある。
牛野尾地区の住民でつくる「牛野尾中山間地事業組合」(熊倉直信組合長・25人)では、墓を移すことはできるが先祖代々の供養をしたいという思いと、地域の人の心のよりどころになるような事業をしようと、緑の羽根の募金を利用してサクラの植樹を決めた。
昨年秋の植樹を計画したが、降雪が早かったために延期していた。サクラは苗木とはいうものの高さ3メートルから4メートルもあり、1本でもかなりの重量。壊れた墓地内は車で入ることはできないため、1本ずつ上まで担いで運ぶ重労働。
最高気温26.1度の夏日となったこの日、サクラを植える穴を掘るのも大仕事で、作業を行う人たちは汗びっしょりだったが、たくさんの花を咲かせるサクラを想像しながら植樹を行った。