飛来したツバメが生んだ卵が次々とかえってそろそろ巣立ちのシーズン。自然とはかけ離れた燕市内の研磨工場の中に巣作りしたツバメも順調に育って巣立ちまでカウントダウンだ。
ツバメが巣作りの場所に選んだのは、自称「磨き屋栄治」こと研磨業川崎栄治さん(62)=燕市八王寺=の工場。研磨機が回ると会話もままならないほど大きな音がする。研磨による粉じんも舞う。「なーんで、おまんち選んだ言わって」と川崎さんも笑う。
5、6年前にも一度、工場の中でツバメが巣を作り始めたので、作りやすいように巣の下に板を付けてあげたら、それが逆効果に。それきりツバメは来なくなった。
昨年、再びツバメが飛来し、今度は巣を作ってしっかりひなも巣立っていった。ことしは4月下旬にツバメが飛来して巣作りを始めた。そのまま残しておいた昨年の巣を再利用し、多少、リフォームしたようだ。巣は壁のいちばん高いところ、天井のすぐ下にある。巣の中が粉じんで汚れていたようで、「最初は親の腹が真っ黒に汚れて、磨き屋のツバメになってました」と川崎さん。
5月下旬になると卵がかえり始め、子どもの数はなんと7羽。巣立ちが近いようで、巣の縁にとまって巣の外に背を向けて盛んに羽ばたきの練習をするようになった。6日夕方は1、2分の短い間隔で親鳥が巣に戻って忙しそうにえさを運んでいた。親鳥が帰ると子どもたちは巣の上に7つの頭を並べ、口を大きく開けて黄色の口なの中を見せ、自分の存在をアピールするようにピーピーと鳴いてえさを求めていた。
川崎さんは「もともと動物好きらっけ、巣を作ってくれたときはうれしかったねー」。ツバメは幸せを運ぶと言われる。巣の下がふんで汚れるので嫌う人もいるが、川崎さんはふんを受ける台を設置して対応している。
昨年の巣立ちは、朝起きるといきなり1羽もいなくなり、巣はもぬけの殻。「それから寂しいったらね〜」、「なんか、あいさつもねーのかって」。もう1週間もすれば巣立つと思われ、今から巣立ちを想像すると寂しくなる。「1回、巣立っても第2陣が来てくれればいいんだけど…」と川崎さんは願う。